このレビューはネタバレを含みます▼
往生際の意味を知れを読んでいたく感動してこの作者さんを知り、こちらを読んでみました。
幼少期から精神的な支配がないと生きていけない結城は元カノを7年間思い続け、「あなたから解放されてやる」とまで言った往生際の市松とすこし重なるような気がします。私はそういう関係性が好きです。
一切の支配や社会規範から独立した夢子と彼女への服従によってのみ生きる価値を見出すことになる結城の関係性が独特に描写されています。途中出てきたストーカーによる手作り弁当の押し付けといった一方的な(ある意味味気ない)関係性がいい対比になっています。
独特な雰囲気の話と米代先生の書く絵(特に目)がとてもマッチしていて気に入りました。
これは個人的な考察ですが夢子はおそらく管理を求めている結城に純粋な興味を持ち、ペットになることを求めたのでしょう。しかしペットの「素質」があるだけでまだ足りないので、存在価値を否定し遺書を書かせたりして「教育」するシーンで結城に飼い主がいないと生きていけないことを自覚させてからペットとしての新たな生を与えたのでしょう。自由を失うのと引き換えにチロは生きる意味を得ることになります。
パシリにされていた時にも父親からの厳しい教育を受けていた時にも結城への愛情は存在しません。チロとなってからも支配されていることには変わりありませんが飼い主からの純粋な愛情を享受できることになります。最後夢子が頬を赤らめていることからもそうであってほしい。チロにとっても幸せなことだ。