このレビューはネタバレを含みます▼
一発ネタ、面白おかしいギャグ漫画かと思いきや、意外なほど骨子のしっかりした作品。多くの悪役令嬢ものは転生して無双or溺愛系で、それはそれで魅力的だけど、結局この話ってどう展開してどう着地するの?と不安になるほど一時の「スカッと」にしか目を向けていないように思う。この作品は「憲三郎の現代への帰還」が大目的にあり、「なぜ転生したのが憲三郎だったのか?」「妻と娘は次元を超えて憲三郎をサポートできるのか?」「悪役令嬢グレイス(本物)の境遇と本当の心境は?」等々の小目的がきれいに散りばめられていて、主眼がブレることなく進み、なおかつちゃんと笑わせてくれる。漫画の基本を学び、実力を磨いてきたベテラン作家さんらしい安定したストーリーだった。キラキラしたイケメンが明らかに描き慣れていないのはご愛嬌。反面、おじさんキャラの作画力、描写力は凄まじい。憲三郎・レオポルド氏(グレイスの父)・ドワーフの親方が一堂に会するコマ遊びの回は感動した。親方の「そりゃあな」というさりげない一言に、父親の温かさ、切なさが込められている気がした。そんなわけで私の推しは親方です。