このレビューはネタバレを含みます▼
アガサクリスティのノベルもの。
ポアロもタペンスも、ミスマープルも出てこない。
完璧とも思える婚約者を捨てて、醜く卑しい男ゲイブルエルと出奔したイザベラ。
語り部のノリーズも、イザベラを愛していた。
しかし皮肉なことに彼は二人の成り行きを最初から、最後まで見届ける役目を担うことになった。
ゲイブルエルは最後まで、知らなかったのだ、イザベラも彼女なりのやり方でゲイブルエルを愛していたことを。
直感のままに動くイザベラ。
貴族階級に属し、本来ならばゲイブルエル等とは、なんの接点もないはずの彼女は、ゲイブルエルの求めに応じて何不自由もない生活を捨てて彼に付いて行った。
イザベラの性格を一言で言えば、ありのままの自分に忠実である、と言うこと。
どんな時でも自然体でいられる女性。アガサクリスティにとって理想とも言えるキャラクターである。
ある種の男達は、この手の女性が存在することが分からない。なので、時には自分が幸せを手にしているのを理解できない。
幸せと言うものは、相手を受け入れて初めて手に入れることができるのだ。