このレビューはネタバレを含みます▼
絵がとても可愛いので、小学低学年向けなのかな?と思いきや、大人も十分楽しめる内容です。本当に王にふさわしい人間とはどういうものなのか?人の上に立つ人、強い人、優しい人、こういったあいまいでも案外一人ひとりが持つ定義についてもう一度考えさせられる内容なのかなと思います。(ここから1巻のネタバレ入ります)主人公のボッジ王は巨人族の両親から生まれたにも関わらず、小さく非力な身体に生まれ、しかも聴力も奪われた小さな男の子。聴力を無くしているので、連動して喋る音も掴めず、人との会話がままならない。会話はできなくても読唇術ができるので、一方的に自分が周りにどれだけ馬鹿にされているかなどは分かってしまう。しかし、ボッジは常に笑顔を絶やさない。ボッジの出征には秘密があった。それは、実は王である父親が若かりし頃、悪魔と取引したからだった。生まれてくる子供の能力と引き換えに父親は世界最強になり、魔物たちを倒し、王となったのだ。そんな呪いのかかったボッジだが、底抜けに心優しく純粋で、それでいて努力家でもあったため、彼なりの強さを身につけていった。父親の戦い方は、相手の攻撃を前身に受けてでも攻め続けるという戦法なのだが、それができない非力なボッジは、全て避ける、逃げる、隙を突いてダメージを与えるという戦法。実はこれを人知れず訓練していたのだった。腹違いの弟との試合で、この戦い方を披露することになるのだが、周囲は初めの頃は「ボッジ王凄い!」と思うも、徐々に「正々堂々としていない」「カッコ悪い」「なんだか卑怯な戦い方だ」と酷評。不穏な空気を察知したボッジの剣の指導者ドーマスは、敢えて剣をよけるなと指示し、ボッジは全身骨折でボロボロになってしまった。この国にいる者のほとんどは、ボッジが次の王様になることを望む者はいない。この非力で、言葉も聞けずしゃべれず、頭の足りなさそうな小さな男の子では、この国は守れないと思っている。ましてや、ボッジの腹違いの弟はとても優秀で野心家ときている。だけど、なぜか、ボッジは人を引き付け放っておけない存在なのだ。現王妃である弟の母親も、ボッジにつらく当たり、ボッジを次期王様にさせたくはないと思う一人なのだが、それはボッジに平和な世界でずっと幸せに暮らしていてほしいと願うからこそだったりする。今後ボッジが作っていく王国がどのように広がっていくのかとてもたのしみです!