ダレンは知らなかった~貴方のおかげで今は幸せです~
神崎しおり/まゆらん
このレビューはネタバレを含みます▼
主人公がラストシーンで「私を“お荷物だ”って言ってくれたでしょう?」という、皮肉たっぷりな言い回しをするのが引っかかった。それまでの主人公は打たれ弱いが素直で頑張り屋な性格として描かれてきたが、このシーンで一気に性格が悪く見えてしまう。
お荷物女と呼ばれたことへの意趣返しがしたかったのだとしても、その暴言に対して「全部本当のことだ、自分はひとりじゃ何も出来ない、変わりたい」と思っており「見返したい」という旨の発言はない。
また留学シーンに関しても、明らかに学校のような場所から外国へ行ったのに外国の学校に入るわけでもなく、叔父の携わる店を一人で切り盛りしているような描写が気になった。それは留学ではなく叔父の店の手伝いでは?留学ではなく休学して叔父の元へ商売を学びに行った、という表現でも良かったのでは?という疑問が残ってしまう。店の経営自体も具体性に欠けるエピソードが多く販売員なのか仕入れも担当しているのか商品開発部門なのか分からなかった。
ヒーローも取ってつけたような登場とフォローしかしない。主人公が客とぶつかって客の持っていた最後のひと品を破損させてしまうシーンでは来週発売の新商品を渡してフォローしていたが、その際に「お詫びの品です」などの一言がなかったので店員の失敗に新商品を押し付けて有耶無耶にしたようにしか見えない。優秀な商人ならば誠実に謝罪をするべき場面ではないのだろうか。
品物を落とした客に関しても、ヒーローを際立たせるためのヘイト役という雰囲気で、主人公とぶつかりはしたものの品物を落としたのはしっかり持っていなかったせいでは、という印象を受ける。会計の際に主人公が受け取った品物を落とす、という表現ではダメだったのだろうか。
ヒーローが主人公に惚れ、主人公も承諾して帰国後自分をバカにしていた幼なじみに「あなたはただの幼なじみでしょ?結婚なんてする気ないわ」と幼なじみの目論見をくじくシーンにも爽快感がない。主人公が成長し自力で出世したのならば婚約者などいなくても幼なじみからの結婚の誘いは跳ね除けられるだろうし、そもそも主人公は雇い主の娘、幼なじみは雇われ人になっているのだから立場は上なのに婚約者を用意した意図が分からなかった。
全体的に登場人物の心情描写が薄く、誰にも感情移入できないし応援したいとも思えない作品だった。
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