このレビューはネタバレを含みます▼
平凡でやさしいバツイチ気象予報士・辻山君(年下)×ワケありで美人な自信家アナウンサー・天王寺さん(年上)。辻山君は田舎の閉鎖的な世界で窮屈さを感じていたり、天王寺さんは都会の会社組織の中で不条理な目に遭ったり、どこか似たところのある二人。そんな狭い世界に囚われた二人が、様々な閉鎖空間で言葉や肉体を交わらせる濃密な経験をしていくうちに、少しずつ解き放たれていく物語が目まぐるしい展開で描かれます。スピード感に振り落とされそうになりながら最後まで読み進め、いつの間にか読み手の方まで巻き込まれていたことに気づいたときには、すでに辻山君と天王寺さんに魅了された状態です。■ 雪の中で遭難(2回)し、曰くありありな村でオークションにかけられ、無人島に漂着し、ホテルで怪奇現象に見舞われ……初めのうちは天王寺さんに厄介事に巻き込まれることに戸惑いしかなかった辻山君が、巻き込まれることを期待し、楽しむようになっていく。抱えている矛盾を自ら認め、暗いトンネルを抜けて、自由になっていく二人の変化に心が晴れます。■ 二人ともその時には言わなかったことだけど、互いに初めてをあげているところ……とてもかわいい……。雪の上を裸足で走った天王寺さんのかじかんだ足を吐息で温める辻山君、予測が外れて長かった辻山君の前 戯を受け入れている天王寺さん、素晴らしかったです。■「BLは自由なんだ!」という思いで描かれたとのこと(後書きより)、こちらも「自由だ〜!」と感じる作品に出会えて幸せです。