このレビューはネタバレを含みます▼
コミカライズとは、小説原作の文字だけだった世界を 画 で視覚的に魅力を伝える物だと思っているのですが、これは全く魅力が伝わってきません。
まず冒頭のモノローグからして原作の魅力を勘違いしている..と感じます。
原作の中にあるものをコミカライズ作者が更に強調して良い点に昇華させるというのもコミカライズの魅力の1つではあると思いますが、この作品に関していえば可愛い女の子に重点を置いていません。冒頭のモノローグという大事な箇所で、恋愛要素を出してくるのは、原作を無視していると感じます。
しかし一番決定的に酷いと感じるのは、展開を画で表現出来ていないところです。状況説明が伝わってきません。作者の漫画構成力がこの作品に追いついていないというか...
戦闘シーンの重心移動や剣先の操作、手元の操作など細かな描写がされていますが、コミカライズでそれが表現されているとは思えません。この先数々の戦闘シーンがあるのにその魅力を伝えて行くには無理があると感じます。戦闘シーンに限らず、些細な描写もです。例えば重要な因縁を持つことになる登場人物との初邂逅シーンで、コミカライズではただ通り過ぎたとしか受け取れない画です。ただ通り過ぎているだけの画に、足元に「トン」という擬音を書き込んでも、そのトンにどういう意味があるのか原作を読了していないと全く意味が通じないでしょう。
絵に関しては好みもありますが、「美女」な敵はしっかり扇情的な衣装で描いているのに対し(原作に衣装に関しての記述はありません)、その辺の雑魚の魔獣はトーンを貼っただけ的作画コストの低さは...主人公が人生で初めて相対する命を脅かす存在ですよ。自分1人の力で討ち取らないと生き残れない。そんな世界に来てしまったという重みのあるシーンですよ。その敵をあんな絵で、しかもどうやって倒したのかわかりにくい、そんな表現で片付けられているのは残念としか言えません。
この作者さんにはこの作者さんの良さがあります。しかしこの作品世界には沿っていません。