このレビューはネタバレを含みます▼
一見するとセンシティブな問題を丁寧に描いているように見えますが、きちんと読むと不倫のネトラレで寝取った方が相手をゲットし、壊された方が無理矢理納得させられ不倫の事実をうやむやにされたという違和感が強く残ります。
恋愛の形もちゃんと読むと三人の気持ちが一方通行で変な図式になっているように感じます。周平、美咲と悠生を同じように愛してるって言うけど、実際は美咲が一番悠生は二番で優劣あるよね?悠生を好きなのって美咲の旦那だから好きで、美咲が周平を選んだら悠生の優先度下がるよね?っていうところがチラホラ見えます。そもそも、好きな相手の旦那と分かって不倫してる時点で美咲と繋がり作りたかったのが分かるし、そういうことしてて自分を愛してって大分思考が斜め上な気がします。
考えて欲しいと訴えたい、伝えたいことは理解できますが、やらかした事に対しての責任の取り方がこうならいいでしょ?と感じてしまうので、けじめをつければ幸せになっても良いよねというご都合主義は見たかった結末とはズレてしまってるかもしれません。
読んでいて期待していたことは、【歪な形で始まった不倫や同居という関係をきちんと精算した上】で、皆が納得して【新しい可能性】を見つけていくという流れでした。
読み進めて感じることは、【倫理観が欠如してるところを叱ったり正して導いてあげるキャラクターが一人としていない】まま、最後まで突き進んでいきそうだなという違和感です。
なぜ、『人の物を盗んではいけません』『そうしたことでどう責任をとって償うつもりですか?』という部分を諭してあげるキャラクターが一人もいないのでしょうか?そこはLGBTの問題とは別の問題と思ってしまうのですが。
悠生の姉が一番その問題を強く言及できそうだったのに、結局はそれすらもうやむやにされてしまったので、全体的に周平のおかしさに巻き込まれてみんながおかしくなったという感じで収まってしまう奇妙さが気になります。
【異様な価値観でねじ伏せられて、見なければいけない問題を別の問題とすり替えられてしまう切り替えの早さ】が払拭出来ないまま話が進むので、性的マイノリティを中心に読みたい人には刺さるけど、不倫の問題を解決して欲しかった人にはとても嫌な印象が残る展開なのかなと思います。