このレビューはネタバレを含みます▼
若い頃ファンだった蝶々さんの本を読みました。しかし私が年を取ったのか、終始違和感…。中でも特に許しがたかったのは、子供の頃に親からひどい目にあった人に対して[親と本音でぶつかってみればいいのに]のフレーズ。加害者である親とまともに話ができると思うのですか?自分の子にそういう仕打ちを平気でできるような頭のおかしい人間が、さんざん痛めつけてきた相手であるこどもの言い分をまともに取り合って聞いてくれるとでも思うのですか?もしも蝶々さんのお嬢さんが、仮に現在夫または祖父母と同居してたとして、夫や祖父母が隠れてお嬢さんに連日連夜いたぶり続けて、お嬢さんが大人になっても心が傷だらけの状態でいたら、[本音でぶつかってみればいいのに、よく話し合ったほうがいいよ]などと言うのですか?また蝶々さんはストーキングされたことがあり、相手から首を絞めて殺されそうになるという、衝撃的な経験をされていますが、そのトラウマを克服するために、相手の加害者と本音でよく話し合ったりしたのですか?被害児だった人たちは一見普通の生活ができているのでわかりづらいですが、こどもが親からひどい事をされるというのは、自分の生死を握る人から逃げられない状態で怒鳴られたり叩かれたり無理やり妊娠させられたり中絶させられたりっていうのを口止めされて、誰にも言えず、凄まじいストレス、恐怖、絶望的な軟禁生活を何年も耐えるしかなく、その結果大人になっても心が傷だらけなのです。私は子供の頃親からひどい目にあったのですが、誰に話してみても、なんの苦労もなく育った人たちにはことごとく否定されてきました。[それでも産んでくれた人][親だって人間]中でもトンチンカンなのは[親御さんとよく話し合ったほうがいいよ]という謎のアドバイス。私の気持ちをわかりやすく言えば、[じゃああなたは、自分の首に刃物当てられ脅され無理やり妊娠させられて、その犯人とは本音でよく話し合ってこっちの言い分も相手の言い分も聞いて理解し合いたいのですね]という事です。命の危険を感じながら暴力をふるわれ、逆らうと何をされるか、死ぬかもしれないから黙って耐えるしかなかった相手と話し合って自分が納得すると思うのですか?改めて聞きたいのですが、それがもしもお嬢さんだったら[あなたの本当の気持ちを、泣いてでも相手にぶつけてみればいいのに]と言うのですか?