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今月(6月1日~6月30日)

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シーモア島
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投稿レビュー
  • イエスかノーか半分か

    一穂ミチ/竹美家らら

    人間の弱さと強さを魅せる作品。
    ネタバレ
    2025年6月11日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 主人公である計の思考が直接入り込んでくるような、読みやすく伝わりやすい文体。毒舌がユーモアに富んでいて、会話の軽妙さも相まって、クスリと笑いつつ読むことができる。
    一方で、切実な感情の揺れ動き、心の機微を描写する言葉選びも素晴らしい。
    計と潮のキャラの魅力も引き立っている。
    弱さを受け入れてもらう唯一の相手として潮を必要とする計と、自分にだけ弱さを見せてもらえる特別を享受する潮。
    潮に見せる無防備な計は、わがままですぐにキレて、悪態ばかりつき、しかも意地っ張りで謝れない、とにかく面倒くさい性格をしているのだが、それでも憎めなくて魅力ある不思議な人物である。
    自分の本性を拒絶されることを極端に恐れ、分厚い仮面で武装し苦しみながら、潮含む様々な人間に振り回され、必死に頑張る姿に自然と応援したくなってしまう。
    計がそうやって苦境にぶつかるたび、潮は八つ当たり(という名の甘え)も許してくれるし、親身になって考え、支え助けてくれる。普通ではちょっと考えられないくらい懐が深くてできた人である。
    しかし一方的に助けてもらっているように見えても、そうではない。助けとか、希望とか、計が特別に意図していなくても潮にきちんと返している。どんな苦境でも努力し必死に挑んで、乗り越えていく計見て、潮も刺激を受けるし希望をもらっているのだろう。

    テレビ局のこと私は全然わからないけれど、お仕事小説としても面白いです。
    2人以外の登場人物も魅力的に描かれています。
    ちなみにエロ描写もうまい。
    素晴らしい作品でした。
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  • アルジャーノンに花束を〔新版〕

    ダニエル・キイス/小尾芙佐

    60年以上前に書かれた名作
    2025年6月11日
    言わずと知れた名作。
    何度もタイトルを聞いていたことと、あらすじに興味を惹かれ手に取った。
    内容と言えば、SFというものに分類されるのだろうか。科学技術の発展が目覚ましく、映像作品や本等で進歩した様々なSFに触れ合える現代に読むと、率直にいえば「まあどこかで見聞きしたような、大枠は想像の範囲内におさまる内容」という思いが拭えない。
    今読んで楽しむとすれば、最先端のように描かれている技術や研究内容の成果ではなく、主人公チャーリーの心情の揺れ動きを感じることにあるように思う。
    興味深く読めたが、今この内容を発表したとしても名作にはならなかっただろうなという感想を持った。
    とはいえ、知的障害や認知症など、昨今よく取り上げられる話題とつなげて考えることもでき色々考えさせられる内容で、例えば読書感想文などにはぴったりだ。それなりには楽しめる。
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  • ロマンス不全の僕たちは

    月村奎/苑生

    中盤〜後半、粗が目立つ(辛口注意)
    ネタバレ
    2025年6月8日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 前半の片思いの描写は丁寧に描かれていて好きだったが、それだけに思いが遠藤にバレたあとの後半が、物足りなく感じた。とにかく二人のイチャイチャ描写に終始しているのだが、あまりにもスルッと行き過ぎて、個人的にはご都合主義が目立つように感じた。
    昴大に告白していたすずちゃんといい、同性の恋人を突然紹介された遠藤の父親といい、やけに物わかりが良くて、安心して読める利点はあるのだが、もう一波乱欲しかった。(特にすずちゃん、もう少し見せ場欲しい)
    前半、昴大の葛藤を丁寧に魅せながら広げた風呂敷が、後半あまりに順風満帆かつあっさりとパタパタと畳まれていくような様子に、戸惑いと拍子抜けを感じた。
    なかなか思いを打ち明けられなかった年月の長さに、もう少し説得力が欲しかった。

    それと、遠藤のSぶりが、ドS超えてやや非道の域に達しているように見える。
    薄々昴大の気持ちに気づいていながら結構な間全くアクションを起こさず、しかも一方的に想いを寄せられる優越感を楽しんでいたともとれる上から目線の言動。
    さらに昴大からの決死のファーストキスのシチュエーションが気に入らず責めたてたうえ、ゼロカウント扱い(お前が告白せず勿体ぶっていたせいだよ!笑)。
    これらの描写を、「初々しくかつSでカッコいい攻め」ととるか、「幼稚で思いやりのない男」ととるかでこの本への評価は分かれるだろう。
    個人的には、片恋しているときの昴大の苦しみを知っているとちょっと違和感。

    ここまで言っといてなんだが、遠藤の件は、まあ正直いって自分の好みに合っていなかっただけという気もしてきた。
    個人的に合わなかったが、レビュー見る限りだとかなりの支持を得ているようなので、作品が悪いわけではなく、単に好き嫌いの問題だと思う。
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  • 彼女失格 恋してるだとか、ガンだとか

    松さや香

    語り口にグイグイ引っ張り込まれる。
    2025年6月1日
    この方の語り口に引っ張り込まれるようにしてあっという間に読破。
    病気も恋愛も仕事もきっつい中、悲壮感漂わせすぎない力強い生き方に天晴と言いたくなる。
    さや香さんは主張・思想を強く持っている方だと思います。
    私なんかはいつもそこはかとなく後ろ向きなうえ、面倒なこと全部曖昧にしたくなってしまう人間なので、きっぱり言い切る人をみると格好いい!と憧れてしまいます。
    病とも恋とも仕事とも全力で向き合いながら、己の信念を貫きつつバチバチに戦う強い女性で、そんな中で生まれる激情が見どころです。終始言葉選びが光っています。
    とにかくさや香さん頑張れ!と応援したくなる一冊です。
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  • アンソーシャル ディスタンス(新潮文庫)

    金原ひとみ

    文体と表現力が好き
    2025年6月1日
    一見、シゴデキの順風満帆そうに見えるアラサー女性の抱える孤独・空虚・心の機微をとらえる表現力が素晴らしい。
    恋人・配偶者はいるのに孤独で。仕事は忙しいけど退屈で…。じわじわと蝕まれていく心。
    そんな様が静かな美しい筆致で語られていて、全く性格が違う私だけど、語られている内容が(この年齢の女性にとっては)普遍的なので不思議と共感し、心の奥底を言い当てられたような心地がします。
    個人的には、マイナスに落ち込んだ心を、ゼロに持っていきたいときに飲む薬みたいな感じで、度々読んでいます。
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  • 美しい彼

    凪良ゆう/葛西リカコ

    すごく良かった
    ネタバレ
    2025年6月1日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 1から4巻と番外編まで一気読みしました。全編通して素晴らしかったです。
    この小説を手にとってから、同作品の漫画を読み、凪良さんの他の作品もよみ、さらにこの年にしてBL小説にハマりだすというヤバい事態になりました。
    あとがきに、キモい攻めが書きたかったというように凪良さんがおっしゃっているように、平良のキャラが特に秀逸だと思いました。
    言動も性格も常軌を逸してるように見える一方で、その思考を辿ると共感できる部分というか、分かる分かると頷きたくなる部分も不思議と多い気がします。
    高校生編の陰鬱な出来事・思考とか、それが原因で世間に対してやや斜に構えながらも臆病なところとか。卑屈なのに自尊心が捨てきれず、無駄に高いプライドに自己嫌悪するところとか…。(だけど、プライドを持ってる自分を自覚すること自体が平良の成長なんですよね)
    ところどころ身に覚えがありますなと頷きながら読みつつも、清居に出会えて良かったねと声をかけてあげたくなります。
    しかし清居と結ばれても、それでめでたしの一言で終わるわけもなく、人間関係を結ぶこと自体が闘いである彼は、恋愛に対しても仕事に対しても闘いを強いられ続けることになります。(清居もバリバリ闘い続けていますね)

    コミカルな場面が散りばめられており楽しくテンポよく読める傍ら、きっちりドラマチックな展開が織り交ざり、登場人物それぞれの成長が見られる、感動的なシリーズです。
    また主要キャラ2人だけでなく、2人を取り巻く人々のキャラもそれぞれ魅力的です。