このレビューはネタバレを含みます▼
サイト内で単話版の表紙を偶然見かけてとにかく心惹かれ、単行本化したら絶対に買おうと心待ちにしておりました。シーモア使用歴5年以上ですが初めてレビューを書きます。
塚本くん×橋内中尉のお話は、悲恋であるはずなのにしくしくと泣きたくなるような悲しさ寂しさばかりではなくて、ほわりと心が温かくなるような、でもその中に拭い去ることのできない切なさがしっとりと漂うような、幸せなのに苦しい、苦しいのに幸せだなという不思議な読後感がありました。一夜を共にし体温を分けあい情熱的にまぐわって、ほんの数刻前にキスを交わしたばかりの相手が、もうこの世にはいないと目が覚めて知る塚本くんの気持ちを思うと涙が止まらなくなります。
八木中尉×志津摩くんのお話は、向こうで八木さんに会うことが叶わなかった志津摩くんはどう思ったのかなと考えました。自分より八木さんに残ってほしい、生きててほしいとかつて願った彼なのだから、八木さんが生きていてくれたならそれはそれで嬉しかったんじゃないのかなぁ、なんて……。何より八木さんは、20年以上経って妻子が出来た今でも志津摩くんのことを大切に特別にずっと想ってくれていて、それを知れただけでも救われたような気持ちになりました。どうかそれが志津摩くんにも伝わってほしい。そして、もう少しだけそちらで待っていてねと言ってあげたいです。最後は必ず八木さんはきっとあなたの元へ行くから、きっともう一度会えるから、と────。
全体を通して絵が本当に色っぽいというか艷っぽいというか……取り憑かれたように何度でも読み返したくなってしまう絵、そして内容だと思います。浅いことしか言えなくて歯痒いばかりですが凄い作品です。長くなったので最後になりますが、通常版と特装版で迷っている方がいたら断然特装版をお勧め致します。うす消し、とありますが薄く消されているというより結構ガッツリ出しつつ最低限黒線で修正しましたという感じで、生々しくて段違いにエロいです。また掲載されているネームには、作中で明確に出ていない情報(例えば志津摩くんが八木中尉に最初に連れ込まれたあの部屋はどこだったのかとか)がチラッと書き込まれていたりしてなかなか面白かったです。買って損はないと思います。好きすぎて皆様のレビューまで隅から隅まで堪能してしまった作品でした。