このレビューはネタバレを含みます▼
始終にかけて展開が目まぐるしく、受け視点ではコミカルな印象を受ける一方で、攻め視点では受けに対する悲劇的なまでの愛情が描かれ、両者の温度差が対照的に際立っている。
しかし、展開が早すぎる故に感情移入はしづらいように思う。実際、攻めが飛び降りたシーンや受けが泣き出したシーンでは、急すぎてどこか他人事(事実他人事)のように感じた。攻めと受けの友人である二人も、物語の重要ポイントに存在していたはずだが、どことなく影が薄い。
ただ、読了後に改めて全体の構成を考えてみると、攻めと受けの二人だけが中心でその他は置いてけぼりとなっているのが、お互いがお互いだけを想いあい、他に何も重要なことなどない、と突き放されているようで、ヤンデレ作品としての完成度は高いと感じた。
特にラストの描き下ろしでの展開において、本編にて一度終えられた解釈が一変して再解釈を要求されるなど、突然背後から肩を叩かれた気分だった。この最後の最後に結末を引っ繰り返していくのは、個人的にヤンデレ作品の醍醐味だと思っているので、最高だった。
見方を変えてみるとハッピーエンドがメリーバッドエンドになるような、そんな作品に仕上がっている。
これもあくまで個人的な解釈だが、攻めだけでなく、受けの抱いている愛情も並大抵のものではなかったようだ。
作品を自己解釈するのが趣味でヤンデレ好きな方にはオススメの作品。