このレビューはネタバレを含みます▼
引き込まれる独特な世界感を持った漫画で、先が気になって続きが読みたくなる。
山奥の寒村の閉鎖的な雰囲気や古くから伝わる風習、それに翻弄される個々の人々の描写が上手く、スリルがある。
しかし、どうしても最後まで受け付けなかったのは、主人公の相浦のクズっぷり。宿の女将さんから好意を向けられても、ヘタレて再三逃げ出し、こいつはゲイか?と思った。また、性に対し奔放な集落の女性に対し批判めいた事を言う癖にヤルことはしっかりやっている。自分を愛している澄子の気持ちを知りながら、ハッキリした態度を最後まで出さず、孕ませた挙句に刀で切りつける始末。また事あるごとに女性を殴る殴る。こんなに見ていて虫唾の走る主人公は初めてでした。死ねばいいのに。コイツといい、同級生の春子といい、中学教師のメガネ女といい、集落の外から来た奴らは押しなべて全員クズ。春子なんて出てくる必要あったのか疑問。顔は丸っきりモブキャラの癖して、いっぱしのヒロイン気取りで殺意が沸いた。
それに対し集落の登場人物には概ね好感が持てる。
最初は無愛想だった宿のバアさんも何だかんだ面倒見が良いし、澄子のお父さんだって、言ってることは全然まともだよね?相浦が澄子を泣かした犯人だって分かるまではむしろ好意的に接してくれたし。
澄子の何度無碍にされてもひたむきに相浦を想い続ける気持ちは切なくなりました。
が、それだけにラストの家庭を持った澄子に相浦がノコノコ会いに行くシーンは蛇足以外の何物でもなかった。
お前今更何しに来たの?って感じで。普通に殺人未遂、器物破損、婦女暴行の犯罪者だろ。相浦は。
とにかく、集落の人々が生き生きと人間臭く描かれていたのに対して、物語上の都合とはいえ、主人公始めとするストーリーテラー勢がとことんクズだったのが非常に惜しい作品でした。