時空を超えて、見えないつながりが、バラバラなはずの人々の人生を結びつけ、手紙という手段で交信する。
時に突き放し、時に関心を寄せ、悩み相談を介して、相談する方もされる方も、人生に屈折点を与えられ、ある意味運命に翻弄もされながら、主体的にひ
とつの道を選び取る。33年(32年間となるのか)の長期インターバルを結ぶ不思議なめぐりあい。いや、浪矢雄治さんにとってはそこまで意識してなかったにせよ、結果として、若い頃からの出来事の総仕上げ的なライフワーク。
時間を扱う話はパラドックスをどう処理するかが左右するが、晴美くらいしか乗っかってないので収まりは悪くない。
離れたところにある幾つかの人生模様、登場人物同士の横の繋がりが当初みえにくい分、新たな場面が始まるとき、それまで読み進めて来た流れが断ち切られ、戸惑いから入る。翔太、孝平、敦也をかませて、ナミヤ雑貨店の不思議な立ち位置がちょっとしたブラックボックスのように、関わる問題は、回答者の声で新たな方向を得るのだ。持ち込む相談者事情と、回答を得て反応して結果どうだったのだ、という先を検証したい気持ち、じいさんならずともよくわかる。
幾つも相談絡みのドラマがあって、オムニバス風に感じるが、晴美のだけが、他の相談案件と毛色が異なる上に、全体の中で目立つ。
3人の泥棒の1日(一晩)が綺麗事でなくてストーリー展開し、話の全パーツを有機的につないで面白い。
4.5のつもり。
映画化された作品だが観ていない。
映画はどちらかと言えば映画館まで割と足を運ぶ方で、予告もしっかり見ているが、食指が動かされなかった。
東野先生作品は他には「容疑者Xの献身」を読んでいるが、あちらは殺人事件、こちらはファンタジー、趣向が異なるとはいえ、あちらのほうが読みごたえはあった。33年目の浪矢さんの意図が活かしきれたとはいいにくい、多少拍子抜けのきらいがあった気がしないでもない。
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