十九で姉に出ていかれた苗屋ですが、井戸から水を運びつづけたら、番頭が一日に一度だけ板の間の隅に湯呑を置いていかれます(沖永りく )の注意事項

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漫画(まんが)・電子書籍のコミックシーモアTOPTL(ティーンズラブ)TL小説Realize出版C-Trap ROMANCE十九で姉に出ていかれた苗屋ですが、井戸から水を運びつづけたら、番頭が一日に一度だけ板の間の隅に湯呑を置いていかれます十九で姉に出ていかれた苗屋ですが、井戸から水を運びつづけたら、番頭が一日に一度だけ板の間の隅に湯呑を置いていかれます
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十九で姉に出ていかれた苗屋ですが、井戸から水を運びつづけたら、番頭が一日に一度だけ板の間の隅に湯呑を置いていかれます 発売予定

830pt/913円(税込)

8/17(月)発売予定

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作品内容

【この作品は生成AIを使用しています】

百と四十、あります。去年より三十少ない。これで出しますか。猪瀬達之は表の土間にしゃがんだまま、指の腹で苗箱の角を順に押していった。
葉山の家は田を持たない苗屋で、土地は苗床の八反しかない。この谷の田の八割に苗を入れてきた家だ。葉山千秋、二十九。十八の年に父が倒れて表の間に座り、十九で姉の万里が家を出て、二十一で正式に葉山を継いだ。縁談は三度あって、三度とも相手のほうから話が消えた。
苗屋というのは、他人の田のはじまりを作る商いだ。作った苗が育つ田を、この家の者は一枚も持っていない。
苗代の一反へ、朝と昼の二度、井戸から水を運ぶ。桶で十二杯。それを十一年つづけている。
達之は三十四。十五で奉公に来て十九年目、二年前に前の番頭の跡を継いだ。板の間の隅、柱の陰になるところに、毎日この時刻、湯呑が一つだけ置かれる。淹れる茶は一日に一度きりで、二度目はない。ほかの者の湯呑には茶葉を二匙。千秋の湯呑には一匙半しか入れない。匙は途中でいちど止まって、半分だけ筒へ戻される。薄いのがお好きだと思っていますので。
帯はもともと母が姉に渡したものだった。姉はそれを十年持って、返しに来た。噂を自分から引き受けた者の顔を、千秋はまだ読めない。
初春、十年ぶりに姉が門に立つ。母の祝言の帯を返しに来ましたと言う。谷は同じ話をしはじめて、注文が二軒断られる。八年前に四十六軒あった得意先は、いまは四十一軒になった。
父の帳に、二月十四日、皆済、と一行だけ書いてある。千二百円。どこから出た金なのか、姉は否定も肯定もしない。十九になった姪が二日歩いて訪ねてきて、帳を一日で読み切る。
苗床の杭が三本抜かれた。表札の前で姪が足を止めた。十一軒を回って空回りした夜、千秋は初めて口に出す。姉は、していません。
その夜、達之は板の間の隅で数を言う。一服の貸しです。今日ので五つになります。数えないと、返してもらえませんので。八年、この家の誰ひとり、その符牒に気づいていない。
初春から初冬まで。数えられていた側が、その数の意味を知るところで終わります。TL長編小説・全10章完結。
九月、十年前の金の綴じの二月分が一枚欠けていると分かる。役場まで辿って、それでも千秋は途中で自分から辿るのをやめた。

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作品ラインナップ 

  • 十九で姉に出ていかれた苗屋ですが、井戸から水を運びつづけたら、番頭が一日に一度だけ板の間の隅に湯呑を置いていかれます
    8/17(月)発売予定

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    830pt/913円(税込)

    百と四十、あります。去年より三十少ない。これで出しますか。猪瀬達之は表の土間にしゃがんだまま、指の腹で苗箱の角を順に押していった。
    葉山の家は田を持たない苗屋で、土地は苗床の八反しかない。この谷の田の八割に苗を入れてきた家だ。葉山千秋、二十九。十八の年に父が倒れて表の間に座り、十九で姉の万里が家を出て、二十一で正式に葉山を継いだ。縁談は三度あって、三度とも相手のほうから話が消えた。
    苗屋というのは、他人の田のはじまりを作る商いだ。作った苗が育つ田を、この家の者は一枚も持っていない。
    苗代の一反へ、朝と昼の二度、井戸から水を運ぶ。桶で十二杯。それを十一年つづけている。
    達之は三十四。十五で奉公に来て十九年目、二年前に前の番頭の跡を継いだ。板の間の隅、柱の陰になるところに、毎日この時刻、湯呑が一つだけ置かれる。淹れる茶は一日に一度きりで、二度目はない。ほかの者の湯呑には茶葉を二匙。千秋の湯呑には一匙半しか入れない。匙は途中でいちど止まって、半分だけ筒へ戻される。薄いのがお好きだと思っていますので。
    帯はもともと母が姉に渡したものだった。姉はそれを十年持って、返しに来た。噂を自分から引き受けた者の顔を、千秋はまだ読めない。
    初春、十年ぶりに姉が門に立つ。母の祝言の帯を返しに来ましたと言う。谷は同じ話をしはじめて、注文が二軒断られる。八年前に四十六軒あった得意先は、いまは四十一軒になった。
    父の帳に、二月十四日、皆済、と一行だけ書いてある。千二百円。どこから出た金なのか、姉は否定も肯定もしない。十九になった姪が二日歩いて訪ねてきて、帳を一日で読み切る。
    苗床の杭が三本抜かれた。表札の前で姪が足を止めた。十一軒を回って空回りした夜、千秋は初めて口に出す。姉は、していません。
    その夜、達之は板の間の隅で数を言う。一服の貸しです。今日ので五つになります。数えないと、返してもらえませんので。八年、この家の誰ひとり、その符牒に気づいていない。
    初春から初冬まで。数えられていた側が、その数の意味を知るところで終わります。TL長編小説・全10章完結。
    九月、十年前の金の綴じの二月分が一枚欠けていると分かる。役場まで辿って、それでも千秋は途中で自分から辿るのをやめた。

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