タカラヅカファンとして以前から気になっていた本作。読んでみたら、歌舞伎と歌劇の対比、アイドルとの違いなど色々な切り口から、歌劇で求められる資質は何かを浮き立たせる手腕が素晴らしい。また、各キャラの設定がしっかりしているので各巻に入っているサ
ブキャラのスピンオフも面白い!
歌舞伎の世界が口伝で承継される伝統芸能で男性だけで成り立つ世界。翻って歌劇は受験で合格した生徒さん達が自分の個性を探しながら必死でどう光るかを考える女性だけで作り上げる世界。作品自体もオペラ、歌舞伎、漫画、様々なジャンルから着想した演目をアレンジして分かりやすく届けてくれて多様で、時代に合わせて変わっていきます。実際、生徒さんもバレエだけでなく日本舞踊、バトントワリングその他、幅広い特技がある人が集まっています。
私は、女性だけで演じることで演目に関わらず女性が主人公になることにジェンダーからの開放を感じるのですが、歌舞伎の舞台に立てなかったさらさちゃんが歌劇の世界でトップを目指す構成にグッときます。かといって単に主人公の成功物語に終わらないのが本作の素晴らしさ☆さらさちゃんなら、憑依型の演技力とスケールの大きさが魅力的なトップ男役になりそう。元アイドルの奈良田愛ちゃんは、影のある繊細さを帯びた男役になりそうで、こちらも魅力的。
細かなことを言えば音楽学校のリアルべったりではない(さらさはとうにショートヘアになってるハズ)ですが、そのくらいがちょうどいいと思います。
初めて舞台を観るとトップコンビが一番セリフも歌も多くて大変そうでも素敵!となるのですが、何度か観るうちに、トップをトップあらしめるのは、周りの生徒さんがそう見せているから、と気付きます。そのうち、気になる生徒さんが現れて、その成長を応援しているうちに、舞台上の役としてみるだけでなく生徒個人の成長とダブルミーニングで舞台が楽しめるようになってくるんです。そんな生徒さんの夢と、観客の愛が詰まった舞台空間は濃密で独特ですが、一度ハマると、他の舞台では替えが効かなくなってくることこの上なし。この作品を読んだら、是非劇場に足を運んでみて、トップコンビ以外の生徒さん達1人1人にドラマがあることを思い浮かべていただけたら、新たな扉が開くのでは。そうなったら嬉しいです!
もっとみる▼