男性の優しさや財産に阿ることを止め、自立して生きていくことを目標としてるヒロインナターシャの気の毒といえるほどの自分への厳しさが痛々しくて身につまされる。勿論女性としての可愛らしさを忘れていないところはホッとするのだけれど。物語は過激派と呼
ばれる者たちとの交渉による和平に勤しむ若きシークヒーローカジムとの恋物語だが、それらに振り回される2人の背景には、サラム国の事情が絡んで命の危機と背中合わせの事であるのに、その危機感はまるで伝わらない。ナターシャのアフリカでの経験に身が震える思いはあるのだが、それらを色濃くは感じない。その理由をあえて言うならHQだから。以前に読んだHQ「砂塵のはてに/東城和実作」を思い出すのだが、比べてしまって残念にしか感じない。アフリカでの経験を無に帰す行動には、やはり安全な国での生活が、喉元過ぎれば熱さを忘れる状態にしてしまっていてそれも現実的ではあるが、残念過ぎる。この背景こそが2人の身を置く土台となるのだから それが希薄では思いの強さや絆の強さは伝わらない。HQとはいえ、疎かにして欲しくはない部分は有るのだ。
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