草間先生の作品にはどれも少しずつ違う独特の空気が流れているのですが、この作品もまたギュッと濃密な空気が入っていてその世界に引き摺り込まれるような感覚になります。
火事がきっかけで同居することになった根岸さんと諏訪くん。
月に2回一緒にピ
ザを食べる橘くんと斉田くん。
委員長といじめられっ子山口くん。
そして銀杏の話。
全部で4つもストーリーが入っているのですが、全部流れる空気が違うんですよね。
最初の二人はほのぼのしているのに、なのに諏訪くんにはどこかひんやりした空気を感じるし、斉田くんのテーブルの下の爪先に何かが弾ける直前のエネルギーを感じる。
名前じゃなく「委員長」と呼ばれていた彼は柔らかな笑顔をたたえながらも足元が砂のように脆い。
どのストーリーも単純に甘々とかキュンキュンの単色でなく、ひやっと冷たかったりヒリっと痛んだり、何か読み手の心に痕を残していくんです。
その最たるものが最後の「銀杏の話」。
この銀杏の話はとても短いのに、言葉で説明し難い深い余韻に包まれます。
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