マキネ先生の作品の中によく見受けられる、背徳の中の愛情。そしてその多くが激情的な愛ではなく、静かで穏やかに続く優しい愛情の物語だと思います。背徳の中でそれでも育ってしまった愛は、多くを望まず、だが枯れることもない、まるで芽吹くことも実ること
もないアスファルトの上に落ちた種のようで、その隙間にそっと根を張り、育ち始める。望まれることもなく、育つはずのない中で静かに咲いた花。それは淡いようで逞しく、誰かを癒す。明が真という個に向き合った時、自身を根底まで掘り下げ、自身の暗く重い罪を暴きます。クライマックス、追いかけた続けた真からのアプローチにするか、真に追われマコトを追い続けた明からのアプローチにするか、物語の表情と意味が大きく変わる中、作者は罪深い明に焦点をあてます。明が罪に向き合った時、そこに落ちていたもう一つの真実。漸く2人に新しい扉が現れる。この扉は明からしか生まれなかったんだろうなと思います。結局のところ、私たちは愛を探して生きている。存在する愛は全てが美しい姿をしているのか?否、私は愛とはグロテスクなのではないかと思うのです。その存在の是非を判断できるのも当人だけなのではないかと。愛のずるさもしかり、逞しさや力強さの一面を伝えてくれる作品なのではないのかなと思いました。
もっとみる▼