相手が同じテンションでいてくれるなんて事、その方が難しい。憧れ、理想、夢のシチュエーション、絵に描いたような彼の一挙一動、期待する方が無駄、と思うのだが、そこは主人公を並外れた恋愛脳の持ち主とした設定で走り通す。一方彼は当初そんな子には付き
合いきれない感を打ち出すも、積極攻勢に詰められていく。関心が動かされて…。
気づいてもらうのを待ってるばかりで受身多くて相手のほうから好きを言わせるストーリーより、私はこういうパターンの方が何倍も好き。相手に言わせる周到さ我が身可愛さの姿勢に、寧ろ女の子の傲慢さとか(勇気の無さが後ろに有ったとしても)を見てしまう。もちろん、堂々と言葉にして申し込む行動を男の子にしてもらえたら女の子は嬉しい。そこは判る。
けれども、こういう、女の子から構ったり、強すぎないアピールや、素直に願望を口にすること、ずるさがなくて捨て身な頑張りが素敵だと私は感じる。男の子にしたってノックされて心に来るものがある、という様な描写が来て、あぁ良かったね〜、と応援気分が上がるのだ。
冒頭の田島君を認識するところと、そのきっかけのエピソードのたじま君の存在は、話がそうなるかもしれないとのこちらの予想そのままで、多少の物足りなさは有った。
人物の絵、特に主人公の顔の造作が相当アッサリなのは作風なのだと認識していたが、却って平凡で普遍的な日常感が出てると思った。高校生のバイトやバイク通学、校内行事の後の校外での打ち上げ、校内カップルの行動などを無理なく彼らの毎日に溶け込ませる効果はあったと感じる。
2巻以降のストーリー展開は先述の通りややありがちな傾向ありながらも、ロマンチックの反対を行っていたかのような田島君が1巻から3巻に至るまで、主人公の嗜好を合わせてくる歩みを楽しめたのは良かった。判らないながらも、少しは彼女への理解に努める姿勢が、そのまま突っぱねていた様な無粋さ無骨さを抜け出して、彼女の世界に来てくれた優しさとなってくる。無意識なプライベートスペース侵蝕感もいいけれど、彼女の希望に沿ってみようとするところが読んでいて、彼の変化になんとも言えない気持ちになる。
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