立て続けに狩野先生のHQを選び堪能している。このストーリーは、男女の機微が細やかにそれぞれの視点で表されて、二人は、本心のやり取りが出来ずに互いに相手の本心が読めないまま、別荘という閉鎖空間で自分の本心と闘う。相手の何を信じるのか、自分の何
を隠すか、相手の言葉に乗ってしまったらどうなるというのか。
次々女を変えて遊んでいた彼も、ヒロインの事を対象と自覚し始めてから、彼女との関係は後戻りのきかない領域に気持ちのスイッチが入ってしまう。しかも、これまでとは勝手の違う対応をとっている自分に、自分で戸惑っている。だが彼は正直。
才能のある男は異性関係にも才能を発揮することがある。仕事のできる男は、女のカバー領域もまた広いとされる。
遊んでいた彼は、遊んでいることを隠さないですむ女と後腐れなく付き合うのに、反対に遊んでいると思ってほしくない相手には、そんな認知のされ方をしたくない。
このストーリーは、よくある、もて男が振り向いてくれるタイプの典型ロマンスであるが、ヒロインの彼への意識がどんどん高まる描写を通して萌えキュン一杯に仕立てられて、エピソード一つ一つの見せ方が上手。ヒロインを誘う意図のない、でもヒロインにはどストライクな刺激が、二人をより追い立てる結果を招いていく展開は、絵的に彼の性的アピールを感じさせる効果を引き出す。
ヒロインの心に影を落とす、ヒロインと彼女の母親との過去の根深いトラブルは、母親の言葉のみしか事情説明ないが、母親の問題というより、元彼の問題。この相当くせのある変化球を当てることで、ヒロインが男性に臆病な事情も、そして、何故別荘に彼が来ることになっているかの訳も、ひとつの背景でギュッと纏まっている。
仕事の現場の、二人を取り巻く状況の描写が、断片断片につぎはぎ感なく、別荘という空間に舞台を変えるまでの流れに持ってくる感じを伝える。
ただし、そんな休暇、あり得ない話であるのに展開していくのは、HQの得意領域なので、異議を挟むつもりはない。
別HQの狩野先生作品にも、仕事の中の様子をいかにもありそうな光景として描写して生き生きしているのがある。これも、あるかもしれないような感じがしてくるシーンの説得力に脱帽。
彼の言動がヒロインをうろたえさせるところの彼の威力は、視覚から入る追体験で実感できて良い。。
彼の、ヒロインへの愛情の証明方法が良かった。
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