おかしみのあるところ、話の進み方に独特の、不自然さのない飛躍があるところ、それを面白いと思える私は、川原作品の作風は好感を持って読んでいる。
明るさで覆われながらしんみりも混ざる川原節は、言葉のインパクトが強く、絵柄はゆるりほんわか優
しくて、堅苦しくなく、するする〜とストーリーが展開する。そこは意外性にも富んで軽やかな進行で、大きな変化を作らずに面白いところに着地する。主人公たちの置かれた状況は、大なり小なり背後にうっすら不幸が入っている。でも、深刻に描かれず、日々の生活を淡々と続ける中で、いろいろな波が来たところを彼女らは受け止める。
「フロイト1/2」と「メロウ・イエロー・バナナムーン」はSF、「花にうずもれて」はファンタジー要素が柱。主人公が身勝手家族等などの被害に遭う少女漫画はかなりあるが、川原先生作品も時折被害者登場。ただし、先生の作品の主人公達がグチを言う場面は、なるほどそうだと同情を誘う語り口(正当な泣き言)で畳み掛けながら、当人たちはといえば力みのない受け止めで、対応しなやか。
そこが魅力に繋がっている。
少女漫画上の王子立ち位置の連中がなかなかにクセがある。それもまた、作品の行方を予測させずに楽しませる。
324頁。
「フロイト1/2」121頁、ほかは30頁前後。
「フロイト1/2」花とゆめ1989年4、8号
「たじろぎの因数分解」花とゆめ1983年9月大増刊号
「悪魔を知る者」別冊花とゆめ1983年秋号
「真実のツベルクリン反応」花とゆめ1983年22号
「花にうずもれて」花とゆめ1983年11月大増刊号
「メロウ・イエロー・バナナムーン」1983年夏号
「ジュリエット白書」別冊花とゆめ1983年冬号
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