毎日無料連載をおっかなびっくり読んでそして嵌まった。次番外編に進む準備は出来ているが、味わいを反芻、噛み締めてるときのうちに、ここでとにかく感想を残しておきたい。とても良かったのだ。
大正時代がモデルで、そのディテイルにまで本物っぽさが出
ている。こんなに詳しい宮廷物、観たことがない。私はハーレクインコミックなどで洋物のお城・王子や国王を沢山読んできたが、こちらは日本を舞台に、それも、平安時代でなく近代、貴族社会ではなく宮中というものを描写した画期的な作品。ここまでリアルに感じ取れるとは、と、実に驚異のハイレベルな時代考証?(架空ではあるが)を体感させられた。久世先生はまるで内部に居合わせたことがあるみたいに描いている。着ている物から宮中の行事、無数のしきたり、宮中のみ使われるであろう歴史がかった堅い専門用語、華麗なる最上級敬語が飛び交い、更には独特の口語の雅な感じの言葉遣い、守られつづけるものを抱える使命感と、一方ひとりひとり人間としての息づかい、何から何まで、読んでいるとそういうものだと思わされる。
そのなかで、宮中に出仕した主人公御園と、ふれあえない程に遠い雲の上の存在である彰子女帝との、いかんともしがたいとみえた小さく細くしかし次第に揺るぎ無き足跡を経ての二人の物語。
互いに近くに居てもそこが難しい。だから7巻の間で示される時間的経過により、互いの感情のその熟成を納得させられる。自覚した後も進めることが出来ない格差が厳然とそこに。皇位継承の年齢的な問題をもクリアする設定の上に、本当に良くできた話だと思った。
丁寧に描写された御所内の空気、場面場面での登場人物達の役どころも配置が上手くて、最後までだれることなく堪能した。各エピソードであらわされる統治者としての帝、取り巻く者達の動き、しがらみの中出来る範囲で少しずつ新たなステップを踏んで前に進むキャラの変化。作り話をそう思わせないように描けるって高い技術だと思う。
全てにおいて手を抜いてない、と思わせる素晴らしい完成度だと思う。
(majestyがmagestyに。律が居たらなんと言っただろう。)
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