地獄から決死の脱出。
たどり着いた先は、未知の世界。一方、そこで出会った彼はヒロインのただならぬ姿と様子、何かと浮き世離れしたところに驚かされながらも、彼女への興味は尽きなかった。
ヒロインは荒れ放題の母屋に丹念に手を入れて、自分の我が
(理想の)家という想いを込めるように、彼には苦々しい存在でしかなかったその実家を、美しく再生させた。
藤田先生の絵が、夢を見るように、そしてそこに本当に家が少しずつ息をするようになっていくかのように、巧みにヒロインによって日々に光が与えられていくのが表現される。
アーミッシュを連想させる現代科学文明から隔絶された閉鎖社会の中で、非道な奴、無理矢理な暴力的な人間によって我が物顔に拘束される共同生活、逃げるしか手段のなかったヒロインの決死行、安心するまでストーリーは終われない。これは、小さなコミュニティにあって生まれ育つ場所を選べなかったヒロインが、好ましからざる人物の家を捨てる形を取りながら、現代の逃れられぬ宗教観や、因習にがんじがらめの、多くの女性の想いを象徴しているようで、暗喩を籠めたとすれば深い話。
終わらせ方がサスペンスのドキドキをもたらすも、ラブストーリーとしては、さすがに伝統的価値観を維持していて、ヒロインが彼に飛び込むタイミングが良い。彼にしてみれば、やっとのことだが、それでいいのだと、流れを見ながら納得する。
一生出られないのは当然なのだが、あの男、私も一発加わりたかった。
邦題の方がvery goodと心から思う。
家(我が家とちゃんと呼べる所)を探している女と、家(生まれ育ったが忘れたい所)を探している男とが、
出会った。
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