どこか淡々とした空虚とも思えるリアリティの無い世界観の、奇妙な存在感のあるその場の空気の褪せた匂いさえ感じ取れるような不思議な世界観の作品です。別の世界の日本で男子学生達が生きている感じ。だけど紛れもなく今のこの日本で。青春の儚さや熱さ、何
かに急かされるように大人になる焦燥感や苛立ち。友情と恋情の狭間で揺れ動く不安定な心と身体。それらを叙情的に描いたのがこの作品です。
十代のこの時期は本当にあっという間に過ぎ去る。自分は一体何をして過ごしていたのだろう?と。大抵、「ああ、無駄に過ごしてしまったかも…」と嘆く事になるのだけど。でも十代のその時は何故かこの時間が永遠に続くんじゃないかとか不安と絶望に襲われてたりして、それを考えないようにしながら無理に楽しんでるフリをしてみたり騒いでみたり、早く早くこの無限に続いて行ってしまいそうな時が過ぎ去るようにと焦って、結果、前文の嘆きにつながる訳なんだけど。
この作品の男子学生達は日々を楽しんでいるかのように見えて、実は深く悩み失望し、また浮上し沈み、この時期に何があるのかを探りながら何か確かなものが欲しくてもがいている。だけど、どれだけの子達が充実して前向きで自分の中に確実な学びを培えた、また友情も恋愛も手に入れた楽しくも苦しい、切なくも嬉しい、そんな十代を満喫し過ごせるのだろうか?完璧とまで行かなくてもそれなりに充実してたと言える十代を。振り返った時、甘く懐かしく喜びも感じられる思い出を。
そんな事を考えてしまいました。
冒頭はギャグコメディのように見えるので笑える軽い漫画だろうと勘違いするかもしれませんが、シリアスです。
十代の頃、悲しさや苦々しいものを感じて過ごしてきた方達には胸を締めつけられるのような痛苦さが感じられるはず。
十代の頃、毎日が友達との遊びに夢中で部活や友情恋愛に賑やかな日々だった方達にはこの作品はただのギャグかBLっぽく見える男子学生達の青春くらいにしか見えないと思う。
そのくらい、評価や感想が分かれる作品ではないかと思います。
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