主役二人のロマンスの引き立て役として、気の毒な位にお兄様(の「存在」や「圧」にも)に振り回されるロレンツォ。二人の関係の展開に、その気儘な次男坊は、同時に引っ掻き回しもしでかしまくって、ストーリーは兄弟間でヒロインが相手をチェンジする。パターンとしてはHQあるあるだが、大袈裟に思えた邦題は内容を捉えている。ただ、大雑把に思える原題にも、話の骨組みだけでなく含意まで受け取らせる上手いぼかし方を感じる。
尾形先生のご担当なだけあって盛り上げどころにハラハラひやひや、または、ドキドキわくわく、仕掛けのままに乗せられる。シチリアと来ればマフィアしか思い出せぬ貧しい発想力の自分に、一族、家の長の他に歴史や遺跡まで繋げ彼らの団結力の源泉に言及、コマを取ってくれてなお散漫に陥らないその手腕さすが。
彼らの感情に描写上の不自然なジャンプなど無く、ロレンツォの行動が何事もハプニングのように(兄の存在故だが)話に波紋を投げ掛けていくのみ。鋭い洞察力持っていながら、子ども達の自主性にも賭けて、自分のアイディアをぶつけてみる母親の智力が光る。
バラの園を巡る話もキーであったにしては(農地にもウェイトかかり)バラのビジュアル少なめだった。私は少女漫画好きであるため、扱いは小さくていいからバラはコマをもう少し彩って欲しかった。
それでも背景の絵がきっちり舞台をみせてくれる。後ろがスカスカで白っぽいのをHQで見かけると読む気が失せるものだが、尾形先生はそこは丁寧に制作されるので安っぽくない。
一点、このテの話に多い、事故や事件も短期間にに複数回というつくりは、気にはなった。