偶然の連続は運命を予感させる。
滑り出しからしばらくある二人の微妙な離れ具合が、ここをどうやって親しくなるのか、と、物語の展開に興味を持たせる。
ドレスの伝説は素敵な話のタネとは思うが、服の生地や縫製の糸の耐久性、そして何より、デザインが、と、つい余計なことも考えたくなる、
それでも、仕事で日々一杯の男性に信じたくもなるな、とまで言わせたシーンが差し挟まれて、伝説が彼の決心の後押しをしたとあれば、立派なキャラクターを勤めた感も大。
多忙な彼に向けての声かけが、西洋女性っぽい気がして、かつ、ストレートな物言いでないところは押しつけがましさもない適度なシンプルさで、ここからの二人の時間がハーレクイン感を出していた。全体のうちのごく一部の時間だから仕方がないが、より親密になっていく分岐点的ひとときあったはずなので、あっさり描写で、もっと観たい心残りはある。
ビジネス上の知り合いという存在を越えて親しみを抱く疑似親子の関係のハワードさんがクライマックスでもグッジョブ。中盤の要にも配置されての、ストーリーのふんわり化にも一役。
冷徹との評判が立っていたという割には周囲にかれの応援者もいて、評判通りとの確信を持つところがない。独身主義者を結婚にシフトさせる経過は、ヒロインサイドのストーリー展開で見えないので、何となく、えっそんなに気持ちが高まってたの?、みたいなおいてけぼり感あり。
もっともその点は、終盤のテンポが速まるようなヒロイン周辺の動きと、ヒロイン自身の行動力とによって向かうラストに繋がるので、説明過剰になれないのは当然。
いまひとつ彼のキャラが見えにくいものの、休暇中に咲いた恋愛のストーリーとしては面白みがある。