記憶喪失ものはいろいろあるけれど、正統?な犯罪絡み。
裏切られたと思った夫が、そうではなかったらしいと気づく迄、記憶の回復にあわせじっくり彼女にあれこれ関わる。もどかしいくらいに二人の美しい愛の断片が現れては、二人のこれからがハッキリしないままの現在の生活が一日一日過ぎていく。
愛した夫のことまで思い出せないほど重傷を負って、それでも思い出すことができたのは、裏切られたと思った妻を、やはりまだ愛していた夫の、腰を据えた付き添い。夫は職場を移してまでも彼女に寄り添ってくれた。
ヒロインもまた、彼を守りたい一心で命の危機を奇跡的に乗り越えてきた。
それにしては、瀕死の事故からの奇跡の生還後も、あとから振り返るにあんまりなピンチの連続だが。
彼は私の好みのルックスなため、その彼の絵に、ところどころで、ストーリーそっちのけで目が釘付け。顔が大好きなのでアップ多目で満足度大。
でも、そんな素敵な彼が、身近な危険に気づかずにいる。いかんともしがたい、女を見る目のなさ、悪人とも知らず信頼してるところを見せつけられる。それだけ読後感としては、生きていたから良かったものをこれで悪人の思う壺だったらどうだったんだ(だったらお話になんないけれど)、というギリギリだったんだなぁとの感慨。そして正義感から来る安堵感も大きかった。いい男には悪い女も来てしまうのだなとの妙なリアリティも見た気がする。
周りの人々が人間の善意というものを最大限発揮して、ヒロインを苦しめた犯罪者の悪者ぶりを埋め合わせしてくれる。事故の被害者ではあるがそれまで見知らぬ人だったはずのヒロインのことを包むように事故後温かくしてくれるたくさんの町の人たち。神に仕えるからといってかくも献身的になるかとも思える牧師夫妻のものすごさ。
(どうか、このストーリーの終わったあとも、無事に長生きしてください、なんて念じてしまうほど!)
彼らのその後が気がかり。
サスペンスが入るHQはそんなに見かけないが、本作品は保安官も活躍していてヒロインを犯罪捜査の面で、大きな力となるばかりか、保安官家族とのほのぼのシーンが加わり、謎解きのシーンとの使い分けで楽しめる構成。
そのため保安官もいかついタイプではなくなんだかいい感じ。
保安官の家庭が幸せになるストーリーも垣間見たいがそこに紙幅を費やすことは本筋ではないため描かれないことも心残り。