綺麗な絵で、HQならこういうこと、という期待に応えて収まりがしっくりくる。室内の装飾的な描写にアメリカ-モダンよりヨーロッピアンクラシックな感じが漂って、ストーリーの中心の舞台であるホテルが、存在感がある。丁寧な表現をされているので、放置されていた古いホテルを改修して甦る過程とその結果のオープニングセレモニーの光景が、薄っぺらな脇役でない。登場人物の人物の描かれたコマにも心配りがあり、HQによくある雑にこなした感じがここではしない。
絵がきれいだということがどれ程このジャンルのコミックには重要かがよく解る。
真面目すぎて、少しくだけようとした場面で一ヶ所(81頁)、そこまで崩すことが必要とは思えなかった。
その一本調子に変化を持たせるならば、カメラアイの意外性や映し出される物の(指輪は十分です)選択に関する遊びがあった方が寧ろ良かったように思う。