タッチが可愛らしくて柔らかいので眼に優しい絵柄。ストーリーの展開力はもとより、人物たちのやり取りが軽快でウィットがあり、相互理解の不足のよる行き違いの積み重ねから生まれる悲喜こもごもの表現力が高い。
このコメディの面白さは、四千強にも上る冊数(2017/6/4現在4,761冊)のHQにおける最高の部類の一冊に入ることと思う。5ツ星を何冊にもつけてきているが、この作品はそのなかでも上位かと。
神坂智子先生の作品「蒼のマハラジャ」をどこか彷彿させるイントロ。違うんだけれども、場所もキャラも何もかも、なのになぜか思い出す。
単なるドタバタでは終わらせないロマンチックさを充分たたえて、夫婦物でも片想いの切なさまで味あわせてくれる。
特筆すべきはラスト二頁の誓いのシーン。
この結婚はいい結婚だったと実感するし、彼の言葉が、HQお約束のプロポーズというのでない、本当の言葉のように、私も、静寂のなかで聞こえたような気がした。このラストだけでも、群を抜いていると、私には思えた。
砂漠の国へ嫁ぐ設定はあまた有るが、このストーリーほど、コメディなのに、真面目な当人たちのシチュエイションに感じ入った作品はない。
原作は読まないので解らないが、ストーリーテリングの巧みさ、画力、不自然さのない場面の繋ぎ、背景のそれっぽさ。民俗調に、小道具や全て全てがなかなかないレベルに揃ってビジュアルにも優れている。
実に小気味良く楽しめてしまう。
初夜シーンだけ、それを表現されるというのは、ターゲット読者層は微妙だと感じた。