ストーリーはカリムの人質救出大作戦と、逃避行中のロマンス。なんちゃってシーク物より生活密着感がありながら、別の意味でファンタジーになっている。リアルな所とあり得ない展開がうまくミックスされて、話の筋はスリリングで熱かった。そこは、何千ものHQの中で多分相当強い物語の存在感を示している。
絵に独特のオーラを纏わせる篠崎先生の砂漠の民の描写も、数多くの中東物でも群を抜く印象的な作図が多くて味わえた。
カリムの顔立ちが民族的なムードを感じさせず、大和男子のようなのが違和感。
あとベッドシーン多すぎる。それも欲求のままに(そういうストーリーだが)求めあう為、ストーリーに期待した逃避行の緊迫が尻つぼみに退けられてしまった。一方でヒロインが襲われそうになる場面が複数回あって読者をそっちで煽っており、なんだかあざとい。私はHQコミックには余り求めない(TLでお待ちします)。
HQは一冊が薄い。その頁数で完結させることが求められているのに、頁数桁違いのノベルの方のセクシー描写に付き合ったら、ロマンスのディテイルを纏めきれないだろうからだ。多分、その路線で企画されていた頃の作品と思うが、ストーリー上の必要性はこの話ならある程度あるとしても食傷。HQだからせめて夢に見るような、美しいものに描いてくれたらまだ受け入れやすい。野性的行動を、厳しい自然と対峙する人間の獣性の表れとするなら、砂漠に暮らさない選択もないことだろう。
後半いいなずけがいるだとか、もうあとは他のHQと同じ所に入り込んで物語の独自性などどこか行ってしまった。
アメリカ人で大企業幹部なら、子女が海外で無防備、というのは、そこは現実離れしすぎな気がする。
米企業トップは来日でもガードマンが同行するというのに。
砂漠のライオン、比喩だが面白いし引っかかるタイトルであって、そこ、狙いなのかな、とも思う。
しかし、「狼」が会話に登場して、日本向け翻訳の親切さ?と、砂漠に熱帯に生息しない動物の取り合わせの唐突感とが漫画世界から私を一旦遠ざけてしまう。
ライオンならテーマなりに有りだが、狼まで持ち出されて流石に、カリムのアジアに見えそうな顔立ちと合わさり、シーク感を減らした。折角ストーリー中、背景そこかしこに滲ませてきて作り出された中東世界が。
当初星数4としたが、読み直して、気になっていた所が更に気になってしまったので、調整する。