先生のデビューコミックス「煙草にルージュ」を36年ぶりに読んだ。買ってたことを忘れていた。結婚前からの漫画は引っ越し荷物となって、今日迄箱詰めされて開いてなかった。因みにシーモアさんは扱いがなく語る場がない。兎に角今と作風がまるで違う。当時絶頂期のLaLaが掲載誌であり、同誌でかなりご活躍。お洒落で明るく、台詞の掛け合いが矢鱈軽い。服もスタイルも確か当時はエッジがきいていた感覚。絵柄は今十代が見ても多分いける。ストーリーも十代の頃の宮沢りえさんか沢尻エリカさんかと見紛うキラキラ業界人、可愛格好いい感じのキャラで、だのに器用じゃない二人が恋人関係の手探り進行。当時のトレンディドラマ風味あり、読み手の当方には印象的な展開だった。
さてこちらHQは、一貫してシンプルで省きの美学で行間を読ませる作風に。
私の漫画読みブランクの間に、お変わりになったのは勿論(どんな画家も画風は変遷)だが、当時の雰囲気は今やどこにもない。
だから、かつて単行本を買ったことを思い出さなかったのだろうと思う。
長いキャリアの中で絵が荒れる先生は少なくないが、くぼた先生は荒れたのではなく、観光地が枯山水庭園に趣向を変えたようなもの。
一作目が初HQらしい。私は「富豪の愛人」(HQ臭い陳腐な題名)のルークの眼がセクシーに見える。覗き込む目に、眉の形に、何故かドキドキだ。今日読んだ1981年8月~掲載の作品も、主人公の想い人安久津さんが年齢は大人でも恋愛に大人ぶることに徹しきれない姿を歳の離れた恋人の前に曝すシーンがあるが、大人の男が、自制するのが苦しいほど小娘に気持ちが掴まれる姿って、なんだかいい。またパリピのお嬢キャラミランダが真人間化して楽しい。
二作目、「ダーリンをさがして」はちょっとありがち要素が高いが、彼の揺れがヒロインへの愛情故に、というところがまた見所。勿論、だから許されるかどうかという話をしたいのではなくて、ヒロインを繋ぎ止めたいがばかりの必死さが、なんだか胸をざわつかせる。
「理性も自尊心も、なんの意味もない」というヒロインの言葉がまさに恋愛というものについて本質を感じさせ、この台詞だけで私の付ける星は高くなる。子守唄代わりの彼の言葉の可笑しさ、直近読んだHQ「愛を禁じて」の正攻法を思い出し苦笑。
「煙草とー」と作者同一か確認にウィキったら、先生は1957年2月12日生と知った。長く描き続けて欲しい。