モノローグの似合う絵柄に、切り取られたひと場面ひと場面の、湖面に起こるさざ波のようなインパクト。
都会の喧騒から隔絶された別荘地の醸し出す非日常の環境で、そこに子どもの頃から地元民として日常となってるヒロインとの淡々とした、でも、心穏やかともいい切れぬ日常が、二人の、表面には出さない奥底の心理描写の一枚一枚の積み重ねのように、じわり映し出されている。
異性を意識させられてしまうお互いが、そのひっそりした日々に立ちいって心にさざ波を立てる。
彼は苦しみから逃れられず、ヒロインは苦しみをこれ以上与えたくないのに、彼はどうしてもヒロインの存在に刺激されてしまう。
二人の緩やかな人間関係の絡まりかたが現在癒しを必要としている彼に効いてくる。
この空気感、くぼた先生のなせる業と思った。
「それでも彼を救いたい」、苦しみから抜け出せない彼、ヒロインは、もう会えないことを意味することに等しくとも、彼にもう一度幸せになって欲しいと願う。
これぞ、彼からの愛を求めない「無償の愛」。美しい愛の形。いい結末の迎え方と感じた。舞台がかったことはなくて、ただ二人は手を取った。