ヒロインが最初に登場するコマで、繊細な筆捌きに見とれた。
服がまず良かったし、花も素晴らしい。
カラー頁なかりせば、この力にまだ出会えなかったところだ。
ストーリーはかなり大人描写なので、私はHQに余りえげつなくなって欲しくなく、そこは本音はウーンという感じなのだが、短い休暇で二人は本当に互いに心身分かちがたく過ごしたことも反面理解できるため、ここはあっさりその描写の必然を認めるしかない。また、彼の筋骨美とイタリア男設定に根拠を与える、序盤の彼の、クズ男に対する完膚無き迄のやり返しには、爽快感と頼もしさで、彼の気骨になにも言えなくなってしまう。この展開だと、終始体の方面も物語展開に不可欠な要素として入ってくるかもしれないな、との予告のよう。
家政婦に勝利させないのも、小気味良かった。
世の中の人の中には、ヒロインがそこでそれをそういうくぐり方で決着することに、HQ特有のアッサリエンドに感じて不満もあるかもしれない。
ヒロインに意地悪な展開をそこでしていたら、それでは、家政婦と一緒だろう、と思ってしまう。
金持ちや美貌を持って生まれたものに対する歪んだ八つ当たりに近いと。
終盤も彼の気骨には、意気に通ず、といった展開、全編男らしさがみなぎっている。
ひとつだけ、言わせてほしい。
JET先生の描く女性は、先述の魅力的なコマとは対照的なところで、私は時々微妙かなと感じていることがある。線の太さと決定力(とでも言ったらいいのだろうか)に、育ちの良い女性らしからぬ気配があること。また、あるところでは、ひとこまに一人登場なのに、女性の描線には、その他大勢色が余りにも出ていたこと。
ただ、その点が逆に、家政婦の人間性をいやらしく強く押し出し、憎々しげな感じや、心の醜さを十二分に効果的に盛り上げたこともあり、功罪両面だ。
最後のコマは、みんな幸せになりましたとさ、としたかったのだろうと思うが、私には取って付けたような印象。
二人のその後をみたいという読者サービスには良いかもしれない。私は結婚してからの生活は、ある意味また別のドラマの始まりを意味すると思うので、蛇足感なくここを、これまでの延長として描写させる制作者サイドの困難さを想像、いっそ無くてよい派。
そこに、二人のその後の順風満帆ぶりを見せつけたいなら、転身に違和感ないような前触れがもうちょっと欲しくなる。