凄惨な人生。リビーという女性のあんまりな状況が私をイラつかせる。それは、運命という名の竜巻が発生し、リビーの母がシングルマザーになってしまう出会いからすべてを巻き込んで衰えない勢力を振るっているかのようだ。しかし、そこにはぽつぽつと陽だまりが夢という手段を使って訪れる「雨の夜の記憶」だ。ニックとの再会が十代だったころの幸せな感情を手繰り寄せ、まるで精神安定剤のようにリビーの心を綻ばせる。それでも張り詰めた現実からは逃げだせない。積み上げられた目の前にある問題、まるでジェンガのように一つずつ一つずつゆっくりと引き抜いていくように解決してゆくのは、なんとも心地よい。HQなのだから結末は分かっていても読み手はホッと安堵するのだ。