上手く行きそうな話は自分で自分を縛ってしまう。理由を見つけて自ら降りてしまう。
途中までは威勢のいい進み方で、兄達も納得させ、彼と関係を積み上げたヒロインだったが。
デートを続ける日々の描写はさらりと楽しそうだ。
年齢から考えても保護者代わりのお兄さんの下を抜け出すいい時期ではあった。
多感な年頃に丁度入りかけだったときに愛する両親を失い、ヒロインの中に恐怖心が生まれていた。愛する者がいなくなる経験が、彼への愛をそろそろ自覚し始めた頃だからこそ、愛する者への心のブレーキとなってしまう。
それにしても、お門違いの怒りを示す流れは、その他の数々のハーレクインに出てくる男性側の筋違いの誤解と対極を成して、まさに思い込みの強さと彼に投げつける言葉の激しさよ、と驚いてしまう。疑われた方はたまったものではない。
降りる格好の理由として有望だったかもしれないが、疑われた方はたまったものではない。さんざんHQ男性の誤解でヒロインが泣いてる話を見ているだけに、読み手のこちらもため息。「理由」を見つけて降りようとした、そこを見抜けた彼だから良かった。怖じ気づいた彼女の心配を吹き飛ばすには、彼女に会えればいい。機会を得られさえすれば、彼の解決策で当たってみることが出来る。
「君と同じだ。僕も怖いよ/それでも僕は君のそばにいたいんだ」
頑固に彼の説明に耳を貸さないのも、そういう人間は世の中多いけれども、私はがっかりした。ただだからこそのストーリー展開があって、結末への打開はこの話の個性といえる。
欲を言えば、ヒロインの絵柄が女っぽさは感じるが、お兄さんたちに男の子のように育てられたことを目で理解する所は乏しかった。
彼の全身像にもう少し私はときめきたかった。
ヒロインのお店はどうなるかは結局触れてないし、お友達アマンダのこともストーリーの始めの方の扱われ方からすることで脇で振りストーリーを回したのに、いろいろ食いっ散らかして終わりまで来てしまい、読み手に置いてけぼり感残る。アマンダが本筋なので、店は彼が良い物件探し、アマンダは話し合いの席に、とは思うが・・・。
追記:
読み直すうち、ヒロインが彼の察しの力に甘えて終えているのが気になり始めた。ひどい言葉で罵られた彼が、「全てお見通し」的な懐の深さで許容するのが、魅力の一つとしても。
当初点けた5星は、今4.5として。