1巻目では、ヒロインが教室を準備し、町の人々に声をかけ、協力者も得て前に進む行動力がよく出ていた。絵が丁寧で、時間をかけて制作されたのではないかと思う。その非常に気合いの入った仕事ぶりが、作品の格調を引き上げて、2巻目に入る。
人でなしの悪い父親を持つ子達の辛い境遇が胸をえぐるし、彼カルの秘密も辛い。
だからこそのヒロインのものすごい実行力は、読んでいて、親は親などと道徳的な感傷では済まされない。子を守るのは誰なのか(親が用を果たさないときは)。最終的に社会は、そのプライベートな事情を知るが、それ以前に救えないものなのか。幸せでない状況なんですと、不幸が起こっているんですと、外に向かって表さなければならず、知られるのはきっと恥ずかしいことだけれども、それがまず周りに伝わることが、渦中の子どもたちを本当に救い出す道なのだと、強く感じた。知人に児相所の関係の話を聞いたことがある。怠慢が原因で悲惨な事件が増えているのではない。使命感は有っても全く人が足りないのだと。そして、制度の狭間で、全ての責任を児相に押し付けて、他が皆逃れているのだと。
誰の救いがどう必要なのか。作品は問いかけてくる。
この作品は、他に道が無かった当事者の、どうしようもなかった行動は社会が不問にしている。
それで、私は誰も困らないのだからイコール解決した安心感を抱ける。
守られるばかりではなく、ついていくばかりではない、ヒロインのような、愛する人間のために動く美しい姿が本作品は魅力的。
彼を救うための日々が、彼の回復と共に甘やかな日々になる。
彼と家庭生活を想像させる対決の嵐の前の静かなひとときが挿入され、ストーリーの味わいを、殺伐としたものでなく、アットホームな空気を入れてメリハリがある。
私はセットで読んだ。購入前時点で後編も読むつもりならセットを勧める。細やかな絵が印象的な1巻目はヒロインの教師として燃える日々がメインで、戦う相手は2巻目から見ればかわいいほう。
2巻目の完結巻は、中身がより濃くなり、より厳しい「敵」を相手にすることになる。逞しく困難に立ち向かうヒロインの、恋にも、そして心の悪い人間にも、敢然と逃げない姿は素敵で、価格を考えると充実感一杯。
それをセットで更に割安とは、ひどい出来のものが多いHQで均一値段なんて既にかわいそうなのに、より一層申し訳なくなる。