セクハラ被害者のヒロインに対して正義心を刺激され、また、被害者なのに有名企業の職場に居たたまれなくなった男社会への怒りを煽られ、ここに、本当はもっと爽快な場面があればと思った。
麻生先生のキラキラゴージャスな絵に、ヒロインの可愛らしさ、よくある展開でも安定感。そこは期待通りだが、彼が簡単すぎる。
疑惑解消も信頼がベースとしたら、彼の信頼の積み重ねをよりビジュアルで欲しかったし、ヒロインの説明をキチンと聞くシーンでの彼の腹落ちを裏付ける要素の提示には、読み手のこちらを納得させるに弱い印象。
彼がヒロインに対して進行する感情の見せ方、説明されてはいるが、眼でもっと酔いたかったと思う。
タイトルの「憎しみが情熱に変わるとき」の、その転換点がより解りやすくなり、タイトルとの適合感が出たと思う。
そもそも、憎しみは、誰からの誰に対する憎しみなのか、疑問もある。
それに、薬物依存の夫婦の子どもは健康上重大な問題を持っていることが多いと聞くが、このストーリー、十字架を背負わずに良かったとはいえるが、赤ちゃんが手がかかっておらず、可愛い寝顔とか、成長ぶりを眺める事ばかりが赤ちゃんとのシーンで描かれていることに、そこまでリアルを求めてはいなくても、何となくいいのかとの気分も抱いてしまう。