ストーリーに大人の事情を滑り込ませ、少々深淵なテーマをそっと呈示、何年も伏された知られざる真実が明るみになるというどんでん返し的展開があり、愛と憎しみという単純な図式に収まらないところに、この作品の値打ちがある。
結婚という結末のストーリーが多いHQの中にあって、その形式がとれず、日向たに出られることなくそれでもずっと男性を愛し続けた女性たちのエピソードが出てきて、その挿入話がこの筋立てを味わい深いものにしている。
結婚できなかったことは不幸だったのか、結婚しても幸せだったのか。
このような結婚の制度的形式的存在の罪深さと、愛ある結婚ばかりではない上流社会に於いて置き去りにされた、生身の感情を秘めなければならない苦しさとを、ストーリーは投げ掛けてくる。
そして、メインの二人は、そんな二組(2.5組?)の解決できなかった困難を乗り越えて、明るいところに、縺れたしがらみをほどいて出てきた。
過去を清算して誤解を突破してきた若い二人の、吹っ切れたこれからが希望に満ちていてほっとする。
セットで読んだ。単独で読んでも割高感はきっとないと思う。