今お姉さんはちゃんと幸せになっているところを描写しないと、それはなんかなぁ~という読者へ、抜かりない目配りをしている、姉の元恋人とのロマンス。
ヒロインの愛で、彼に巣食う根深い、求めても返ってこない人間関係への虚無感が、解消される。
彼に愛を気づかせようとするヒロインの使命感が、愛する者の強さというか、愛を知ったものの勇気というか。
上手く行かないのでは?、との先行きの破綻の恐れを二人のラブの最初から読者に抱えさせて、空回りの流れを鼻先にちらつかせながら進行する。ヒロインには諦めをけしかけるような試練のとき、読み手よりヒロインは前向き。
ヒロインがまたもう一度やってみようとするところが、意外に頑張るな、と、気骨を見せつけられるシーン。失うことを恐れて深入りを恐れ、でもいざ失いかけてみて知る彼のその痛みのシーン、姉では克服できなかったものを、ヒロインが乗り越えられた、との安心感となる。
絵はきれいで、二人の燃え上がっていくシーンは良いのだが、どことなくアッサリとした印象が拭えない。しかも、ストーリーの前半と後半が若干彼のキャラに不整合感を覚える。
すれ違い生活も、そこまで徹底的に避けられると逆に妙な気はする。ストーリー上致し方ない面もあるのだが、愛を失うことを恐れて、と、子どもを不幸にしないために、という二つが結び付き辛くなってしまう。
ヒロインは、反対に、前半の警戒感発信しまくりと後半の彼への愛情アピールが、恋人になるときの愛の自覚があっても彼の不安の高まりと対照的過ぎ。むしろ、あれほど避けておきながら、と。
なんだか、二人が恋愛関係に陥る前と後とで正反対のように捻れたのが、当然には感じ取れないため、もうちょっとその変化に対して理解できる、橋渡し的なところが有って欲しかったとは思う。