突然自分の命が肉体的に終わったら、想いはどうなってしまうのだろう。昨日の続き、今日の続きがあると、明日の来ることを疑ってもみないでいたら、この世に残った未練は、さ迷える魂となってあの世に旅立てないのではないか。
この発想自体はありがちであっても、本作は決して何処かで読んだ感を抱かせない、話のユニークさを保っている。設定の中に、オリジナリティが籠っている。絵も、そのコマの中に何をどう何処に立って描いているかを見てみれば、随所に才能がキラキラしている。コマの中の、描写されているものの配置がまたいいと思う。そこにも非凡なお力があると思う。だから私は本作をよくあるようなものだとは少しも感じていない。
それにも増して、ルーキーにしては異例の、まだデビュー間もない時期にこれ程のものを編み出された、というのが凄い。
一話完結で繋がっていき、死出の前のドラマなり状況なりが、人生の突然の中止によって新たな展開をせざるを得なくなった時に、大袈裟にしないでちょこっとサポートする、善かれ悪しかれ一区切り付ける話。
田中先生の造り出した世界の設定に親しんで楽しめるよう、柔らかな見せ方がいっぱい。物語を紡ぎ出す逞しい想像力、それを読み手に納得させる創作力。読んでいて先生が構築したものに置いていかれないよう、全ての絵と文字に目を凝らす。
力の入りすぎた展開をしないから、気軽に読めるのに、それでいて胸の奥がちゃんと刺激される。
うまいなぁと感じる。
今まで全巻通して読んだことはなかった。面白いとは昔からわかっていた。絵も丸くて描き慣れ感が強いため親近感抜群。
ただ、こうして本作読破の時期が今に至ってしまって、後年の制作のものを先行して読んでいて、本作にキラリ見せていた叙情的表現を、他の作品は賑やかさが薄めているような気もしてくる。その静の要素がここは効果ありと思う。
ハピエンロマンス好きの私ではあるが、この作品が湛えたような味わいを、他の作品でももっと感じたいと思う。1999年ー2002年作品(ドラマ化記念2016年作文庫未収録)。
草野誼先生の「桜人」(2016年頃発表か)を2年前、滂沱の涙、涙また涙で読んだことを思い起こす。一話一話で閉じられていたのは同じ。「お迎えです」はキャラのドラマが読んでる自分の感受性に訴えてきていながら、結末でキャラの気持ちが軽くなっていることを見届けて読み終える点で、ホッとする。