好きなパターンのラブストーリー。天体望遠鏡シーンは、照れが伝わってきて良かった。二人の初々しさ瑞々しさがなんとも言えず、珍しいくらいに読み手の私の胸真っ直ぐに入って来る感じ。
昔の気持ちを、途中で捨てずにそのまま来た。憎らしい。でも、ずっと視界に。なんて純粋な感情であることか。
この再会は15年周期の彗星の到来よりも、ずっと貴重で絶好のワンチャンスかもしれなかった。
そんな二人が、互いに相手の心のうちを読もうなどという策をとらないままに、二人きりで同じ屋根の下で過ごす数日間。
高校生くらいの時に自分の気持ちに素直に動けないひとは大勢いる。そんな、ほろ苦い思い出も、今大人になって昔話にできない現在進行形の感情。
ベタだけど、ダンスの申込をしたオジサンからもぎ取ってのパートナー名乗り出る彼の行動に、読んでてキュンが来た。ハイスクール時代の思い出とダブらせるストーリーが、現在なら一歩踏み出すことを可能にした成長を遂げているのだということ、若過ぎて思うようにいかない青春のすべてとの鮮やかな対比を象徴していて、このシーン、胸に来るものがあった。
十代の片想いの甘酸っぱさを掻き立てられて、その痛みや後悔を押し出して、今大人になって再会できたからこそ出来るリベンジ。気分の高まりでそのまま突き進む二人。打算も誤魔化しもない二人の気持ちの成就。ただ果たせなかった片想いの本当の結末を、昔には望めなかったその先を、二人の間にあった壁の気持ちいいくらいの崩壊によって、突き抜けるスッキリ感がいい。
120頁の告白シーン、胸にギューッと刺さってくる。
二人の永年の気持ちがやっと心の底の方からその外に出てくるとき、凄く私の狭いところをムリに通って来て、ふたり其々のシーンでいちいち、読み手の私の喉の奥が痛かった。