舞台となっている地は日本より高緯度のはず、そこでその病に倒れることもあるというこの話には、驚いてしまった。
そして、旅を続けていたことにも驚愕だ。しかし、病を一人で抱え込んで(正確には従者ガイと)、生きる意味が解らなくなり、あたら人生を彷徨っていたニコラスは、人助けの精神が溢れている彼のキャラ故に、行き掛かり上に出会ったヒロインを何とかしてやりたいとの正義感で共に行動。これは、きっかけはヒロインをどうこう思ったからではない。彼女の兄もそもそもニコラスのそんなキャラから救出の手を差し伸べているのだ。まずその人間力がベースにある。
正義のヒーローとは、こういう人物を言うと思う。助ける義理もなにもない人を、巻き込まれたくないと多くの人は見て見ぬふりをするからだ。
そこが、騎士としての矜持を物語に溢れさせるストーリーを見事に成立させる清々しい要素だ。
彼も一人の男性、ヒロインを異性として意識してからは、自らの病ゆえに抑制的に振る舞う。
でも互いに好き。周囲のお膳立ての可愛さもやり過ごしてしまう。
結局一人でなんか生きられないということだ。従者しかり、愛する女しかり、そして、知らせたくはなかった兄弟しかり。皆の手によって、それも、最悪の対峙も覚悟した相手からも。
最後のとどめは、父親の側面の援護。
二人のロマンスは薄まったが、話の作りの良さと、そして何より日高先生の、このディ・バラシリーズを描ききった、時代物の表現力に感嘆し、星は5つ。
ただ、これ程大勢の兄弟が皆似ていて、そこだけは振り返って誰が誰か分かりにくくなってしまうのが難点。
セットで読んだが、個別レビューをここに書いた。