シングルマザー、それだけでもどれだけ大変か。経済的には絶対的に勿論のこと、精神的にも何かとストレスはかかるし、また、社会が両親を前提とする為のハンデ感は半端ない。シングルペアレン「ト」もそうだけど、身体がひとつしかないのに、あれこれ養育には付き添いの必要なことはどっさり。これで解雇とは、ヒロインジュディスの抱えている事情の深刻なこと! けれど荻丸先生の筆致はカラリとして、奮闘を温かく描いていて夢がある。
本人からではなく息子に語らせた出産の経緯に胸は締め付けられる。本人の語りではないところに巧さが。そして、そのジュディスの自責の念を、息子のウッディ自身ずっと認識していることそのまま明かされ、胸の鼓動が停まったまま読む感じ。
ただ、二人の出会いは、もう神様ありがとうしかない。
お互いにとって最高だし、短期的軋轢は避けられなかったけれど、素晴らしい家族関係の発展があり、統合効果と来たら、全員得られるものしかなかったような気がする。仕事に喜びがあるのも物凄く幸運なこと。これ迄のアンラッキーを塗り替える夢展開だ。ウッディのせいではないことなのに、周りの悪ガキ、頭来るが、想像力貧困の子どもあるあるなのだと、展開上の盛り上げ一装置なのだと。
そして何より、メインの二人が互いにひかれてどうしようもないのが、読んでいて気持ちがいい。本心を隠している時期はあったが、ひねくれることなく隠すこともなく向き合い、彼の家族、ジュディスの家族、両家族を覆っていた暗闇に向かい合い、克服すべきを突破し、絵に描いたような幸せな家族結成へ、環境がどんどん整備されていく。ポジティブエネルギーが満ちてくる。
もう一人、産科病院で産まなかったキャラも気持ちのいい人柄設定で、全編、多様な人物がストーリーに厚みをもたらす。
一冊完結の多いハーレクインに私が求めるハッピーさをこの本から充分受け取れる。気持ちのいい1日の始まりに、出発前の隙間時間に読めて、これで軽やかに外出できる。
あとは成長後のウッディの幸せも見届けたかった、という、願うべくもない、このお話の少し遠い先を勝手に祈らせてもらっている。
お産てかなり大変なイベントなのに病気じゃないからと安易に考えてる人多くて、この話が(ヒロイン、クリスティーン、リンダ)多くのお産を話の中に扱うことで、そこも代弁しているようで嬉しかった。