ムンムンと男性ホルモンを撒き散らし、気のきいた台詞もない。むしろ失礼なくらい。
武骨だけど、相手のためになることを黙ってやってくれて、見るからに困ってるときはすぐ手を差し伸べてくる。
彼はヒロインを最初から思いきり女性として見ていた。だからこそ、互いの発散する異性の魅力に逆らう気が無くなるのは時間の問題だった。この話の男女は意地は張り合うが分かりやすいシグナルを発して、次第に気持ちを深めあう。
二人の気持ちの本物加減が羨ましい。
ヒロイン、ミスティは、罪を擦り付けられる苦しみを味わい、その上、それじゃ男性不信にもなるわ、というような目に遭った。
その彼女にしてみれば他人との関わり、特に男性とはもうコリゴリだったはず。
その心の痛手を、深い深い傷を、癒して余りある、頼りになる彼の存在。素晴らしい。お腹の子ども共々ひっくるめ愛するとは、天晴れすぎて涙が出そう。お話でなければ、世の中捨てたものじゃない、とでも言いたくなる。理不尽な濡れ衣ながら、犯罪者の扱いを受けたミスティを信用する彼の懐の深さは、彼の称賛されるべき人柄だ。見た目の濃さで相手への理解をやめてしまってはいけないことだと改めて思う。
彼の何人もの男兄弟が皆人間味豊かで、行き場のなかったミスティの居場所として、彼女の生活のなにくれに対してとてもさりげない包容力を発揮。
これ迄人の醜いところを見てきたヒロインには、この人以外にこの人以上の幸福を彼女にもたらさないことを自覚していて尚、彼の肝心なものが欲しい。
ロマンス定番とはいえ、それがなくては次に進めない、というところに、西洋の言葉重視文化を体感した気がする。
黙って待つだけでは彼は気がつけなかった。ヒロインへの最後の詰め。
兄弟たちや、ヒロインの心情に触れて、漸くヒロインの求めるものを理解して応えた。
そこ、躊躇せずに行動、そしてヒロインの胸は晴れ、ヒロインは彼の胸にも飛び込めた。
強い個性で男性の容姿はマッチョ系、直情径行型がストーリーの登場人物の生育環境に合う。
その太い腕と胸板に収まるヒロインの幸せな結末を見て、HQ世界のカバーしている領域の広さを、改めて感じる。
500冊目のレビューをここに投稿して、今後1年3ヶ月ほどコミックから遠ざかる予定。その間に面白い物が出ていることを願っている。