眼のバランスがどこか落ち着きの悪さがあり、人物の描線に、確信を持ったこれしかない的な選択を感じず、がちゃがちゃとした印象を残す。
私は古いという理由では低評価にすることはない。皆が皆、流行りの絵面ばかりを発表していたら飽きてしまうし、過去に発表された作品も新しく発表された作品も、私は同じ土俵に上がっていると思っている。また懐かしく読みに戻ったりするからだ。絵が時代を映してるのも、作家性で周りに惑わされず画風を貫くのも、どちらも共存がよい。
だが、コミカライズは、原作ものを扱う関係で、どうやって見せてくれるか、いかに長いものから料理してくるか、翻訳物のバタ臭さをどう落とし込んで来るのか、作者の力量の見せ場。この勝負所に、HQ世界的な洗練はどうしても欲しい。
決して安くないHQを買うので、絵の要素は、ストーリーと両軸を、成しており、好き嫌いの問題などではなく(多様性は欲しいから)、古い新しいでもなく、変な話、物語進行無く台詞無い所でも目に留まる場面は欲しい。流れる映像ではなく、自分で読むスピードを途中で何度も調節出来るのだから。ぎこちなくて飲み込みにくいコマがいくつかあると、流れが小間切れに分断されるかの印象を持ってしまい、のめり込めなくなる。
もっとも、HQのピンきりの広い作品群で、問題外に受け付けられない物だと最初から読まない訳で、これは試し読みの時に、先に進めてもいいと判断したのだ。HQの中のひどいなんて思えるものは、ハナから手をつけてない。
「一般的」な文句をここに書いてしまっているが、この作品は大丈夫。
もっと目が小さいともう少し大人に見えるのではないのか。寄り目に見えると、メインキャラに読者が添いにくいのではないのか?
メインキャラたちが作り物っぽさを感じさせ、選ばれ提示された、という感じのしないひとコマひとコマのなかで、ギクシャクとして見える。
場面と場面も何か滑らかさを殺しあっている気がして、ゴツゴツした印象。
人物以外の絵は反対にとても行き届いていて良かった。
二人が相手に夢中であることを冒頭で示してからの中間的な期間、冒頭を否定する格好で中間部分があり、終わりに向かうと、いやいや、やっぱりと。
イベント一つ一つに気持ちよく騙される事が出来ずまた信じられもせず、辛くなった。
二人の結末までの成り行きを見守る関心が看病シーンのあと行き場がなくなった。