HQって不幸な境遇だったヒロインでもご近所や友人に恵まれてることがあるが、本作は彼とヒロインに助けられる遭難者以外は結構皆がヒドイ。多分本当にダサいからではなく、目に障るとか、微妙な立ち位置故に叩かれるとか、思い知らせてやろうだとか、イジメ体質の人間たちなのだろう。人でなし、というべきか。
でも、ここまで露骨でなくても、よくそんなことやれるな、という人は世の中には居るから読んでいて、あー居合わせちゃったんだな、それも類友グループを向こうに回しちゃったね、と感じだ。
辛辣な打撃を与えに来て、そんなことで優越感を持つ人でなしが、好きな人間にはそういう顔を見せないというところに義憤一杯になるが、そこ、読み手のストレスは解消されず。
押して押して押し一手、という彼、女性の服なんて全く見てない。それテーマだから、服装が勝負所との勘違い同僚連中にもそこで話が絡まない。彼がヒロインの何を見てるか。
それがこのストーリーが光る所以。
もうイジメに近い嫌がらせの別れをした元カレも、言葉の攻撃でヒロインに退場圧力をかけ続ける同僚連中も、ヒロインの自信喪失に決定的に残酷な結果を招いているけれども、だからといって彼ディノのヒロインを思う気持ちに無関係なこと。
傷ついたヒロインの立ち直りは一重にヒロインの自力克服にかかっている。ディノは自信を与える言葉を幾つも発したが、ヒロインの自分への劣等感を完全に払拭出来てない。
前に踏み出す変化がヒロイン自身の内側から涌き起こってこないと結局同じ所から抜け出せない。
何回も彼女は挫ける。その度に意地悪人間コノヤローなのだが、一度だけ反撃シーンがある。
いい変化と思ったが、一本調子で強くなっていく訳ではない。
また、そんな容易く調子づいたら、ヒロインの人間としての可愛らしさはなかったかもしれない。
逃げまくるヒロインを根気よく何度も誘いかけるディノの愛情と男らしさが素晴らしい。
羨ましい。人間誰しもそのままの君でいいのだと受け止めてもらいたい。現実なかなか難しい。この男性はヒロインを全面的に受け入れて、その意味で理想的な男性。つれないとさえ思われかねないヒロインの行動。それゆえにアッサリ引き下がってもおかしくない、それでも果敢に誘ってくれる、という得難い人。積極性に魅力がある。
山岳救助隊という珍しい題材が活かされておりイタリア男らしさも全開だ。