画力がないと描けない題材を扱ってスケールもあるのに、ストーリーに面白味がない。これは原作がこうなのだろうか? エピソードの取捨選択というかまとめ方の問題なのか?
画力の無い人は担当しようとはしなかったろうとは思う。重火器やら、狙撃やら、大作だ。話が面白ければ言うこと無かったのに、残念極まる。
男と女、これも和解(?)があっさりしていた。他の舞台装置は全て大袈裟なのに。
ベッドシーンは数回あってもドラマがなくて、ただ求め合うといっただけの。
はっきり言って、この頁数、一般的にHQ活字版はそのシーンが多くてコミックとは別物と考えている。コミックスのほうで、そういう場面を積極的に描いた時期のものに面白いものはあまり無かったのだから、頁が少ない漫画にそれを入れすぎると、ただの陳腐な三流本に成り下がる。
辛うじて橋本先生の洗練された筆が、低俗化を食い止めている。
不倫を好まない読者には歓迎もされないだろう。
私は、一刀両断に全てを否定する考えはないから、人質のように強制的に妻にさせられていたヒロインが、そこに居なければ彼と出会えなかった、彼も、ヒロインが組織に囲われている女と知りながら、感情を留めることは出来なかった、というシチュエーション萌えするのだが。
相変わらず、カメラアイも角度が良いし、何より、都会をヘリコプター飛ばしてカッコいい絵を描ける少ない漫画家として、視覚的に組織とか対決の構図とか迫力を、出してくれて良かった。また、二人のサマになる人物絵で、何コマか目で楽しんだ。
よく映画でお金をかけた作品が超大作気取りで超駄作ということがあったが、この話にもどこか通ずる。ニューヨーク摩天楼素敵、ペントハウス素敵、組織を抜け出した後ろ暗い過去のダークさの陰影が素敵、など部分的な目眩ましが、余計に筋立ての皮相さを際立たせる。絞りの悪い進行でつまみ食いのイベントのいずれもが何にも収束に動かない。全て束の間の静けさと平安。偶然と突然が、漫然としたストーリー進行に劇的な仕掛けもなく入り込んでるだけ。
シリーズ物のようだが、私はまだ一冊目。
力があると思っている橋本先生でもこの感じなら、他はどうしょうか、ここで留めておこうか、と思案中。