好きになってしまうタイミング、それは誰にもわからない。今は丁度いいタイミングだなんて考えて恋に落ちる訳じゃない。そこのところ話が能く突いてて、ひかれ合ってしまう二人、時と場合そっちのけで相手を欲する。感情と行動の突っ走りがとてもよかった。けれど、苦悶。いけないことだとか、モラルを口にする人は人を好きになってないから言ってしまうのだと思う。喪も明けやらぬ内から、とか、道義的に許されない、とか、そんな言葉で引っ込みがつくなら、古今東西誰も迷わないし傷つかない。
出会った相手が悪いというのは、自分に仇なす相手とか天下の極悪人の時だけで。この二人は互いに他に変えられない人がよりによって、そのタイミングで、その間柄だった、というだけなのだろう。
その辺を丁寧に掬って、程よく積極的、そして努力の節制。こういう点がクオリティを高めたかと。
ただ、いかにもこの真っ只中で公表はできないと。
それもまた、苦渋の選択の辛さが伝わる。
しかし、このストーリーは、本物の二人ならまた奇跡があると、そう信じさせるストーリー。
勿論、互いの相手を思う気持ちの強さ故に、漫然と偶然を待ってた訳でもないが。
ニューオリンズはいつか行ってみたいと長年夢見ながら、まだ私は行けてない。その街の一角一角はいかにも、という感じで情緒豊かに描写されていたと思う。
こんな偶然あるか、という設定だが、こうした一族の一連のロマンスで、この三作目の登場人物は、意外だった。フィオナじゃないんだと驚いた。
彼女はいいキャラしている。3番目の兄対面前「美形でしょうね」!
この作品で既にレビューを書いている人が、三部作の締めくくりと位置付けているので、そのつもりで読んだ。
大富豪と結婚する若い女性、ハタで誰もが思うことを女性サイドで取り上げている。このシリーズで明らかになった義理の息子たちや義妹をスキャンダルに巻き込ませまいとする、ヒロインの決意の強さが、りりしい。
また、物語前半にルイスがサマンサの意思の強いところを、ボートに乗るときさえ自力で頑張る姿を通して確認するシーンが、ヒロインキャラを示す物語の一本の背骨のようになって、ストーリーがグラグラするところがない。
ルイスの優しさは、ヒロインサマンサの気持ちの追体験を通して、愛される幸福感を味わうことが出来る。君が望むなら、と彼女の意思を尊重する彼が素敵だ。