寄る辺無いところが二人ちょっと似てもおり、多感な十代で互いに一瞬交差したエピソードに印象を残し合った。この記憶と、再会で改めて始まる感情がいい展開なのだが、彼マックスの心情がヒロインにじりじり傾いていく経過と、転回部で離れる事情描写(我に帰る)とに、また、その距離を置くことへの、後説明の根拠(口走りそうな思い)との接続に、少し分断感、ちぐはぐ感を持った。
中盤の気球シーン、これも素敵なモチーフのはずなのに、見せ所っぽい高揚感が少し見えにくい。
夢を全て叶えても尚充足しない、という筋は結構ありふれている。だから、ヒロインなりの夢に、読者としてはより共感したかった。
キャリアはどうなるのだろうか。もう一方の夢を手に入れた後は、やっぱり彼だけ?
「僕たちはお互いきっとまだ愛を信じられない」が、でも踏み出す二人、というのがとても良かった。
最後だけの舞台挨拶のようなささやかさで済まさない、双子の兄ルカ夫妻の物語への噛ませ方も良かったのだが、そうなると「もつれた愛」を先に読むべし、となるか 。
あとがきにも七星先生が触れられていたが、「情事の身代金」のロッコも、本作のマックスも 共に顔の同じような場所に、似たような傷 長い痕、というのは、私にはちょっと素直には受け止められなかった。
このシリーズ、4作品全てメイン二人の家族が良くない。「愛の逆転劇」のヒロインシエーナの姉編「もつれた愛」のセリナにも痛々しい傷痕(顔ではないけれど)を出してきて、アビー・グリーン先生は傷で結んだんか? と勘ぐってしまう。
酷い親だらけに傷ばっかり、暗い話に転びそうな深刻な設定でありながら、HQらしく妙に軽さもあり、希望で明るく仕上がって、読んで憂鬱にはならない。
そこが、救いでもあり、題材が上滑りしそうな中途半端な危険もあり。
この4部作(3+1)の兄弟姉妹は男性達がいずれも並外れた意志を持ち、実行力もあるが、その若さで?との逸材揃い。この狭い人間関係にしてそんな棲息密度?、など考えると、折角HQに来てるのについ目が覚めそうに。